かのくらかの

かのくらかのが送るかのくらかの。と言われたい。娯楽感想日記。

ネタバレを含みます。

神坂一 スレイヤーズ 08 死霊都市の王 感想

竜王ガーヴに対して絶体絶命のリナたち。いかに~!?

からの冥王フィブリゾ登場の不意打ちバイバイ。しかも前回から端役ででていました。と。

ざ、雑~

ガウリイがさらわれて、サイラーグに向かうも邪魔する竜将軍。
人里に配慮しつつ、わざと殺さないように立ち回って…雑~

フィブリゾくんなんだか良く分からない理由で都市復元したりゲームっぽいことして、間抜けな動揺で倒されて…

ざ、…

ここまで読んでこの作品のイマイチ乗り切れない点が

  1. ラ・ティルト、ドラグスレイブが大味
  2. 魔族戦に緊張感が無い
  3. 魔族が人間レベル(の馬鹿(悲))

デス。
奇数巻はまあまあ緊張感があったのですが、それでもここ数巻の魔族が人間の土俵で戦い過ぎてて、しまいにはフィブリゾくんの振る舞いが耐えられませんでした。
強く振舞っているVSゼル・アメリア戦も、ラ・ティルトが効かない時点で手詰まりですし、その前にガーヴやラーシャートに有効打にならなかった時点で試合未満ですよね。お話としてイマイチ…
「足手まといにならないように付いていく」と宣言した以上は、何か見せ場が欲しかったところ。


どうしても一巻以降は練り上げた設定のしわ寄せがシナリオに来ている感じで、やや真面目な本編にお付き合いするのはちょっともう難しいかなー。

と思いながら読んでいたんですが、フィブリゾ倒した後のエピローグは読み味良く妙にさわやかで、魔剣探しという題材も面白そうだし。
一部が終わって魔族も落ち着くなら読み続けてもいいかな。とかなり天秤が傾きました。不思議。

でも、キリが良いし評価が上向くより下がる気配のほうが濃厚だったので、読むのはちょっとお休みします。

短編かアニメか。何かで興が乗ったらまた読み出すかも。
時代の違いのせいとは言いたくなくて、自分との相性な気がする作品でした。

宮部みゆき 幻色江戸ごよみ 感想

www.shinchosha.co.jp

すごい久しぶりの宮部みゆき
好きな作家だけど、かれこれまだ4冊目ぐらいで、読むのは十年ぶり?

江戸モノは本所深川ふしぎ草紙を読んだけれど、もう内容忘れたなあ。

江戸時代を舞台とした、12編の短編小説。
人情もの。でいいのかな?

ジャンルはミステリーだと思わせながら読み始めた「鬼子母火」。
”あ、そういうのアリな作品なんだ”と諒解するとともに、宮部みゆきワールドに再入門しました。

江戸時代を舞台にしながら、
登場人物の人生の一部を見ているだけなのに、
短編という短いページ数のなかで、
キャラクターたちをすとん、と受け入れられるのです。

心情のゆれ幅を味わう作品で、誰も彼もが『それまでの人生』があったんだと感じる人々が織り成す人の情念。ときには生死さえ越えた。

それが「鬼子母火」から「紅の玉」の流れでぐわぁーと押し寄せるんですよね。
ハッピーエンドだったりバッドエンドだったり、敵を倒したり誰かとお別れしたり。
普段カッチリと進行した物語を読みなれたうえで『たったこれだけの話』で心情の機微を味わえて面白いのは…面白い。再発見。

言い換えれば密度が高い、ですか。
「器量のぞみ」なんて、一度そこで終わっていいところから、さらにもう一歩進め落としたのは贅沢だと思いましたし。
世間を知り竹を割ったような主人公をああも迷わせ、ある意味すっきりとはしないような決断までの流れは好きです。

人が人をという点では「庄助の夜着」も。傍観者の読者をして『そこはそうしておけば!』と言えない物語で。
みんなが優し過ぎる結果の結末。庄助の本当はどっちだったんでしょうか。どちらだといいんでしょうか。

細かい部分では、対話しているけれど一人分のセリフしか描写されない落語形式?音声作品形式?
な「春花秋燈」「小袖の手」も語り口が好きなところ。

そして「紙吹雪」の笑顔で〆。と。

各話序盤の江戸っぽさが野暮ったいと思う人も居るかもしれないが、それを差っぴいても短編なのですぐにオイシイところにたどり着ける。
時代背景に疎い人でも楽しめる作品だと思います。

なかなかどうして未だに長編は手を出しにくい文体なんですが、短編はべらぼうに面白いですね。
読書入門には勧めにくいですが、普段別ジャンル読んでいる人ならちょっとした気分転換になるかも。なりました。

小川一水 トネイロ会の非殺人事件 感想

トネイロ会の非殺人事件 小川一水 | 光文社文庫 | 光文社

読もう読もうと思っていた小川一水
さていざ読もうとするとハヤカワ文庫は主目的なんですが気後れしてしまって…
日常の謎っぽいタイトル+中村佑介のトネイロ会の非殺人事件に逃げてしまった…。

はい中身はSFではなくミステリ中編が三つとなっています。

星風よ、淀みに吹け

閉鎖環境適応訓練設備での最終日に起こった殺人事件。
…そう殺人事件。しょっぱなからつまずいてますが、全作品人が死んでいて。
ミスったー!と思いつつも、宇宙物は好きなので読み進めました。

…しかし、うーん、宇宙飛行士を選抜する訓練中のクローズド環境での殺人事件なんですが…。
いくら最終日の深夜といえ、外部の監視の目がゼロというのは…
警報も出ているわけですし、外部の職員がまったく不干渉というところが激しく気になりました。
最終日の行動なんて特に評価に影響しそうなので監視してしかるべきというか…。
私は実際の訓練の様子は知らないので宇宙飛行士もののマンガなどの知識だけで言ってるんですが、どうしても腹に落ちない。

そして殺人の結果、メンバー全員の宇宙飛行士への道は遠ざかるし、
動機はどうあれ後々カメラの録画(当然あるよね?という脳内前提)で犯人はバレるでしょう。
じゃあ殺したとしてそれを黙っている動機付けもまったく共感できず…

科学的?な殺人トリックとそのための閉鎖空間をぽんと用意しました。
といった趣の作品。
ちょっとお粗末に受け取ってしまって、悪いストーリーでした。

くばり神の紀

ミステリというよりは土着信仰の伝奇モノといった、コワイ風な話。
主人公含めキャラが立っていて、3作品の中では一番好き。

話自体は不気味で、原因や猿含めてちょっとゾクゾクして良かったです。

ただ、黒幕については…うーん…。
自然死したときにしか発現せず、そんな人は死後MRIなどにもかけられないから存在は秘匿される…
うーん、死後直後に大量増殖するわけじゃないから間近の検査や事故死などであっさり存在は見つけられそうな気がする。
そして死後の財産分与が近親者に平等になされるからこれが世界に広まれば世界平和になる…らしい。
なる?ならなくない?一部地域の歴史的実証があるからといってそれで世界中の生前の人々が幸せになれるとはどーしても思えない。

世間のお金持ちが全員、すべれの財産をそれまで虐げてきた人に与えて死ぬんだ。


富を開放する。何代か続けばすべての人間が平等になる。

いやーないないないない。渡し方も良く分かりませんよね。生きている人間が口頭指示を守るのか。そして貧困な人が金だけもらって平等まで持ち直すのか。
今までのホラーっぽい話から一転、思考がちゃち(に感じ)すぎて一気に覚めました。
何世代か続けばわかりませんが、わからなすぎて何の感慨もないですよ!

トネイロ会の非殺人事件

「非」「殺人事件」ではなく「非殺人」「事件」。
「殺さなかったこと」が「問題」の話でした。

前2話でかなりテンションが落ちて、これが最初に何人も登場人物をどばーっと出して、殺人に関与しなかったことを実質的には無問題としながらも遊びの範疇で推理していく…
という流れで、ギブアップ。

話に興味がなく、キャラも数のわりに魅かれるものはなし。
トネイロはORIENT急行殺人事件から逆読みでそういった意図のようです(ググった)。
犯人見つけてなにになるのか?というところが面白さにつながらず、興味が無い分野でもあったのでパラパラと流し読み。
オチはスカッとさせるようななんやかんやでした。あんまりしなかったけど。

まとめ

つまんなかった。
くばり神の紀がまだ読めたので、ギリ二つ星かなあ。
ミステリは合わない人なのかも。
SFを期待しているので作者の評価はまだ落ちませんが、他のミステリ本は手に取らないかなあ。
素直に天冥の標手に取っておけばよかったと後悔。

んー、書きたい核や設定があって、だけどそれにたどりつくまでのストーリーやキャラがちょっと強引というか、上手くないといった印象。
私がキャラクター・ストーリー・アイデアのうち前二つを重視するので、ミスマッチだったのかな?

貴志祐介 新世界より 感想

bookclub.kodansha.co.jp

いやー面白かった!!
久しぶりに他の時間を削って本を読み進めました!
ホラーの人だと敬遠していたのですが、すごいSF。面白い!

木曜日に読み始めて、金曜夜に図書館で惹き込まれ、土日費やしたらもうこんなにページ読んでる!?って。ペース新記録かも。

ホラー避けしていた他の作品も読もうかな?

この作品は一応アニメになったことは知っていて、醜悪な生き物が人間、あるいは人間性を主張して嘲笑されるってことだけは知っていました。
でもほぼ前提知識無しで読めてすごく良かった。アニメも気になる!!

前提知識なくて、タイトルからどこに着地するのか全然わからなくて、読んでいて本当にハラハラ。
幼少期の管理された世界を新世界へ塗り替えるのか。主人公は革命の御旗になるのか。はたまた裏切ってバケネズミの側についてバケネズミの新世界たるのか…
一応、後年の述懐形式だけれど、本当に先が読めなかった。

展開の読めなさに加えて設定の秀逸さがいいですよね。業魔悪鬼(フォックス・イン・ザ・ヘンハウス!)に猫ちゃん。全員が超能力持ちな中人間世界でも不穏な空気が流れて落ち着く暇がない。
ついでに言えば、主人公たちは社会に対して負け通しというのもきっついものがありました。すべてたなごころの上で、警戒してたのに記憶操作されまくりって…。

バケネズミのオチに関しては、ある程度予想はできちゃったかな?
旧世界の呪力持ちと非呪力持ちはそのまま今のバケネズミとの関係ですし。
でもそれでも最後の最後でも人と認識しなかったこと。ついでその能力関係が悪鬼によってひっくり返っているというのは「攻撃抑制」「愧死機構」の設定がとても面白かった。

でもちょっと殺意判定が謎ですよねー。
薬などで精神をごまかすのはだめでも不浄猫やバケネズミに依頼するのはOKっぽいですし。毒薬渡すのもOK。最終兵器も最初、殺意感じることなく殺せるって触れ込みだったような?だからボタン一つのミサイル的なものだと思ってました。あれとはねw。

もひとつ能力関係でいうと、信じない人が観測することで能力が発現しないっていうのもありそうですが面白いですね。信じない人に見せてみろって言われても見せれない。どうやってうまく観測されるかという過程も面白そうな題材かも。
結果としては円環少女の悪鬼みたいな感じですかね。

良くなかった点としては、ホラー畑だから?
途中途中でその後の悲劇を度々ほのめかすことがちょっとウザったかったです。
しかも起きたことって驚天動地というわけではなく、結果的(ほんとうに結果だけなら)には死人が多く出た事件・事故レベルだったわけで…
主人公が関与しなくてもあの規模の事件は起こせそうですし、バケネズミの文明の発達スピードとかみても、遠からずメシアを手に入れることもできそうな気がします。メシアが無くてもテロ的な向こう見ずにならあれぐらい出来そうですよね。
起きたあとも被害はまあ人死にとバケネズミの激減ぐらいで。人といっても一区域?レベルで人類に手痛い打撃ってわけでもないんですよね。

そこでタイトルに戻るんですけど、物語のスタート時点が「新世界」であって、作中で人がたくさん死んだ何某かが起こって新世界になったわけではないんですよねー。
「より」ってことで書いてる主人公の今が新世界かと思っていたのですが、どうやら読者から見ての新世界のようでした。
ドボルザークのあれは確か望郷的意味があった気がしたんですが、あの世界は旧世界を惜しんではないのでそこもミスリードというか肩透かし。(強いてあげればすべてを優しく隠された幼少期が望郷対象ですか)
メシアからの東京探になるとこれが締めなのか…とちょっとだけ落胆したかな…。ディスい人間社会は変わらないわけですし。
あ!奇狼丸はすごい、最後まで油断させない東京編のエッセンスですよね!!しかもかっこいい!!クライマックスの!!

…まー!毎度のごとくマイナス点ばかりあげつらっていますが、本当、揺籃の中を切なく描いた幼少期編も、バケネズミとの冒険編も、大人になってからの強さと忘れたことを覚えている葛藤を描いた部分も、全部全部好きです。
たぶんもう一回最初から読むとまた感慨深い味わいが出そうな、本当、面白い。好きな本。

文句なしの星5で、この本が貴志祐介の最初の一冊で良かったと思えるお話でした。

図書館ちゃんの保身も好き好き。

野尻抱介 ふわふわの泉 感想

起業するところまでは間違いなく星5だった。
だけどいきなり3年後に飛んで、脈絡ない地球外生命体を出してと、こりゃダメだ。

「高校生の泉」が偶然にも夢物質を生成、量産化に成功して…
と、あらすじからは高校生の低スケールですごい物質をどう扱っていくのか?が主題に見えたんだけど、
結局高校生成分は一瞬で終わって、後はいつものSF。一気圧下で空気より軽い物質ができたら社会はどうなるかって思考実験がメイン。
そうなると後半の「ふわふわ」思考は作者が書きたいことを書くための誘導路みたいに思えて、そこに泉というキャラクターは存在しない。
いわば導入詐欺ですねえ…
これなら普通にいち研究者が発見したってあらすじのほうが最初からそういう話として受け入れられた。
まあ、ただ、野尻Pの普段の作風なので、こちらが過剰に低スケールを希望し過ぎたきらいはある…かな。

でも地球外生命体は擁護できないぐらい唐突で、「ふわふわ」とも関係ないですよね?
あれ要る?要らなくない?
南極点のピアピア動画は、まだ邂逅の理由付けが納得できたんですよね。
でもこっちはダメ。
だから、南極点のピアピア動画が焼き直したというか、こっちが荒過ぎるプロトタイプというか。
本当、作者が何をしたかったのやら…。「書きたかった」なら納得できるんですけど、SF作家ってもっとなにか理由もってそうで。別の理由ならそれはそれで下手って評価になってしまって…。

とにかく星2。想定を悪く裏切るつまんない作品です。
南極点のピアピア動画を先に読まなかったら評価が上がったかもしれませんが、逆にこれが入り口だと他の野尻作品には手を出さなかった可能性も高い…。

二人のふわふわ再現方法のアプローチの違いや、ふわふわ粒子の分かりやすいたとえ方や、町工場の人々とのやりとり、「空への落下」、「ふわふわ上で窒息死」など面白い点もあるのですが、本当にもったいない作品…。

桜坂洋 All You Need Is Kill 感想

dash.shueisha.co.jp

再読。

初読は桜庭一樹と間違えて、でも内心違うだろうと思いつつ、安倍吉俊の表紙に誘蛾されて読みました。

映画化すると聞いたときはまさか!でしたねー。
その映画も地上波で見たうえでの再読です。
大体感想は初読と同じでした。

ザ・ライトノベル

読み返してすぐ思い出したのが、すっごい日本の、ライトな小説だなあという感想。
ミリタリーでSFな雰囲気なのに、キャラ造詣がすごく日本。
特に女性キャラの容姿描写から言動・行動が。
特に特にシャスタはテンプレ過ぎますよね。(フィギュアの造詣のくだりはメタというかお前らが言うのか!て気分でした)
それは魅力や可愛さに繋がっているものの、ハードなものを期待していると拍子抜けを受けるぐらい。
再読ではそれゆえになんでこれがハリウッドで受けるの…?
と疑問になるが、そういえばその辺は跡形もなかった。
でも原作としてチョイスされたときにどう評価されたか気になる。

ループものということで攻略ルートを示唆するギャルゲー的意味でもわざといぐらい可愛くしてるのかなあ。
でも時間も紙幅も無いしね。踏み込まないんですけど。
「そういえばスーパーダッシュ文庫だった」
ということを思い出せ、キャラの馴染み深さのおかげでサクサク読めるんだと思う。
フェレウやヨナバルも含めてね。

想定外のループもの

ループものといえば、主人公の行動によって未来が決定して、繰り返しの中で行動と結果を観察し、最適行動を見つけ出すパズル的ものを想像します。
映画版が大体それですね。

でも小説は(理由があるが)そうではなくて、毎回戦場の様相が変わる。
主人公は良い行動を探すのではなく、出撃回数を増やすことで「経験を積む」ことを目的としています。
いわばシレンとかのローグライク系ですね。
ギタイ側も行動を最適化していくのでこの方向性はあっているんですが、
そうと知らない低ループからキリヤが(基地は別として)終始パズル的解を取ろうとしないのは自分と違って意外でした。

「ループしているから≒勝てるまで戦うから、強い」
ではなくて
「経験豊富な古参兵だから強い」
が徹底している。
ループしているから敵の行動が分かるのではなく、何度と見てきた単純な敵の行動だから分かるしかわせる。
ループ回数で見ると少なく思えるが、150~200回戦闘したと言われるとキラーマシーンになるのもうべなるかな。

今回も騙されたリタさん

ループのルールについてはSF班ではないので疑問もありますが置いときます。
リタは今回ループしてないということでいいんですよね?
でも最後、梅干の種を吐き出すところで、リタも別軸でループしてて、してないフリしてラストまで導いてるんじゃないかなー
という疑惑を、確か初読も今回も洞察してました。
だって最後のループの新密度の上がり具合や行動、(泣く以外(これも演技と深読み))落ち着きっぷりが怪し過ぎなんですよね。
あんなに同士を求めていたのに事情を説明されてあの選択肢を、少なくとも表面上に躊躇を微塵も見せずに短時間でやりきるのが…

悲しいぐらい覚悟決まってる。
だから、たぶん普段ならもっとキリヤのループ部分読ませて!ってなりそうだけど、リタ編も大分好きです。

映画版ではトムが逆にあるシチュエーションを経験していないフリをしていたので、原作の反転かな?と疑惑を勝手に深くするトラップになりました。

ラストは…

好きなんです。しっかりもろもろ繋ぎきってのベストなエンドだったと思います。
しかし…
あだ名のせいで名前の逆算臭が際立って、そこがちょっと鼻について残念ポイント。
あそこで一気にフィクションだって気持ちにスーっと引かされるんですよね。
まったく無関係なあだ名だったら本当、終わりは文句なしでした。

あと残念なの!

ギタイのビジュアルが分からない…
溺死したカエルと連呼されるが棘皮生物寄りでもあって、イメージが付かないんですよね…
安部氏の画風なら合いそうなのでイラストがあればよかったんですけど…
小畑版では書かれているんでしょうか?
ここが毎回残念!

まとめ

ガンパレが着想といわれると納得。
ただしループものとして入ると期待と外れるかも。

全体としてはミリタリー臭とギタイの設定の面白をとがっていくキリヤ目線で、
ラノベとして非常に読みやすくまとまっている。
しかもただ軽いわけではなく、全体を通して孤独な寂しさが漂っているので、読了感もじんわりとした、染み入る良さがあります。

評価は3.5の4かなあ。
熱心には言いませんが「良い小説」と言いたい。
大好きとは言わないけれど、また数年したらふと読み返したくなる気がする本です。

白鳥士郎 りゅうおうのおしごと! 03 感想

生産性のない話が嫌いです。
不毛な話が嫌いです。

曰く、天才だとか努力だとか努力の天才だとか。
曰く、振り飛車だとか居飛車だとか。
曰く、ロリコンだとかロリコンじゃないだとか。
曰く、きのこだとかたけのこだとか。

つまりはこの巻はそういうお話なわけで。

いや、もちろん書き方で良くなることは承知ですし、
メインは才能が無い将棋好きの身の振り方という大事な話です。

一人は才能は無いけど将棋好きなのに親に止められた子。
一人は才能は無いし将棋もそんなにだけど親のためにやってた子。

うーん、大事だ!
ちゃんと書けば面白くなりそう!
ただ、振り返ると…
両者とも将棋の勝敗で決めるという王道展開なのですが、
結果から言えば二人とも、その将棋に勝っても負けても将棋を続けていた(続けることができた)だろうというわけでして。
挑むまでの覚悟は大事だけど、読後感がよろしくない。

あと竜王か。
銀子さんは桂香さんの将棋というか才能に一門として認識しながら憚ってた感じがありました。
竜王そんなのあったっけ?
1・2巻で才能モンスターの虜になるのはしかたない。
見落としてるかもしれないけど、じゃあ才能的にも年齢的にも危うげな桂香さんに対する気持ちの整理とかスタンスとかが感じなくて。何年一緒に過ごしていたんだと。
飛鳥ちゃん(とマエストロ)との関係を通しても見えてこなくて。
将棋が強い人しか興味が無いってキャラが居てもいいんですけど、
竜王、一門の絆とかちょいちょい言ってるんです。
なのに年下の姉弟子にも年上の妹弟子にも天衣にも、結構雑な扱いしてるように見えるんですよね。
それは紙幅の関係もありそうで、今回は二人の話に振り飛車や山刀伐~名人ラインのマイルストーン、研究の話とか盛りだくさんなのも一因かも。
作品として、巻単位で弟子(一門)の話に集中するか、竜王自身の順位戦・タイトル戦の話に集中するかしてくれないと、ちょっととっちらかった印象になっちゃうなあというのが今巻の感想でした。

以上、天衣の入門祝いが軽く流され桂香さんに奪われた私怨でした。

評価は下がって2。
メリハリを付けて、ラストの将棋の内容をもっと具体的に納得できるように描写してくれたら上がるかなあ。
キャラとノリだけで進まれるとそこが良くてもプロ将棋の部分で評価下がりそう。