かのくらかの

かのくらかのが送るかのくらかの。と言われたい。娯楽感想日記。

ネタバレを含みます。

小川一水 トネイロ会の非殺人事件 感想

トネイロ会の非殺人事件 小川一水 | 光文社文庫 | 光文社

読もう読もうと思っていた小川一水
さていざ読もうとするとハヤカワ文庫は主目的なんですが気後れしてしまって…
日常の謎っぽいタイトル+中村佑介のトネイロ会の非殺人事件に逃げてしまった…。

はい中身はSFではなくミステリ中編が三つとなっています。

星風よ、淀みに吹け

閉鎖環境適応訓練設備での最終日に起こった殺人事件。
…そう殺人事件。しょっぱなからつまずいてますが、全作品人が死んでいて。
ミスったー!と思いつつも、宇宙物は好きなので読み進めました。

…しかし、うーん、宇宙飛行士を選抜する訓練中のクローズド環境での殺人事件なんですが…。
いくら最終日の深夜といえ、外部の監視の目がゼロというのは…
警報も出ているわけですし、外部の職員がまったく不干渉というところが激しく気になりました。
最終日の行動なんて特に評価に影響しそうなので監視してしかるべきというか…。
私は実際の訓練の様子は知らないので宇宙飛行士もののマンガなどの知識だけで言ってるんですが、どうしても腹に落ちない。

そして殺人の結果、メンバー全員の宇宙飛行士への道は遠ざかるし、
動機はどうあれ後々カメラの録画(当然あるよね?という脳内前提)で犯人はバレるでしょう。
じゃあ殺したとしてそれを黙っている動機付けもまったく共感できず…

科学的?な殺人トリックとそのための閉鎖空間をぽんと用意しました。
といった趣の作品。
ちょっとお粗末に受け取ってしまって、悪いストーリーでした。

くばり神の紀

ミステリというよりは土着信仰の伝奇モノといった、コワイ風な話。
主人公含めキャラが立っていて、3作品の中では一番好き。

話自体は不気味で、原因や猿含めてちょっとゾクゾクして良かったです。

ただ、黒幕については…うーん…。
自然死したときにしか発現せず、そんな人は死後MRIなどにもかけられないから存在は秘匿される…
うーん、死後直後に大量増殖するわけじゃないから間近の検査や事故死などであっさり存在は見つけられそうな気がする。
そして死後の財産分与が近親者に平等になされるからこれが世界に広まれば世界平和になる…らしい。
なる?ならなくない?一部地域の歴史的実証があるからといってそれで世界中の生前の人々が幸せになれるとはどーしても思えない。

世間のお金持ちが全員、すべれの財産をそれまで虐げてきた人に与えて死ぬんだ。


富を開放する。何代か続けばすべての人間が平等になる。

いやーないないないない。渡し方も良く分かりませんよね。生きている人間が口頭指示を守るのか。そして貧困な人が金だけもらって平等まで持ち直すのか。
今までのホラーっぽい話から一転、思考がちゃち(に感じ)すぎて一気に覚めました。
何世代か続けばわかりませんが、わからなすぎて何の感慨もないですよ!

トネイロ会の非殺人事件

「非」「殺人事件」ではなく「非殺人」「事件」。
「殺さなかったこと」が「問題」の話でした。

前2話でかなりテンションが落ちて、これが最初に何人も登場人物をどばーっと出して、殺人に関与しなかったことを実質的には無問題としながらも遊びの範疇で推理していく…
という流れで、ギブアップ。

話に興味がなく、キャラも数のわりに魅かれるものはなし。
トネイロはORIENT急行殺人事件から逆読みでそういった意図のようです(ググった)。
犯人見つけてなにになるのか?というところが面白さにつながらず、興味が無い分野でもあったのでパラパラと流し読み。
オチはスカッとさせるようななんやかんやでした。あんまりしなかったけど。

まとめ

つまんなかった。
くばり神の紀がまだ読めたので、ギリ二つ星かなあ。
ミステリは合わない人なのかも。
SFを期待しているので作者の評価はまだ落ちませんが、他のミステリ本は手に取らないかなあ。
素直に天冥の標手に取っておけばよかったと後悔。

んー、書きたい核や設定があって、だけどそれにたどりつくまでのストーリーやキャラがちょっと強引というか、上手くないといった印象。
私がキャラクター・ストーリー・アイデアのうち前二つを重視するので、ミスマッチだったのかな?