かのくらかの

かのくらかのが送るかのくらかの。と言われたい。娯楽感想日記。

ネタバレを含みます。

芝村裕吏 遥か凍土のカナン 01-02 感想

遙か凍土のカナン2 旅の仲間 (星海社FICTIONS)

遙か凍土のカナン2 旅の仲間 (星海社FICTIONS)

ガンパレの芝村をやってる人ですね。
近年は執筆業に熱心で、小説を手に取るのは初めてです。
マージナル・オペレーションとどっちか迷ったのですが、あっちはまだ改やらFやらややこしそうなので7巻完結のこちらで。
うっすら調べた感じではこの遥か凍土のカナンもマージナル・オペレーションとつながってそうですが…この年になって世界の謎を萌え追う風追い人にはなりたくはありませんな…
ガンパレは…榊版が…士翼号入手ぐらい?九州奪還で止まっているので。あっちも読み直すなら最初からですね…

ということでカナン。
なんと一巻分まるごとweb公開らしいので助かります。あとがきないのでそこでかなり書籍が欲しくなりますな。

sai-zen-sen.jp

前提知識なしで挑みました。
最初は純ファンタジーか今はやりの異世界転生なのかなー。と。カナンってヒロインの名前かなー。と。
そしたらまさかの日露戦争塹壕戦。
死んで転生かと思ったら跳ね返して帰国ですからね。なかなか不意打ちでした。
でも、面白いですねー。冬の陣地戦は好きです。
前装式とはいきませんがボルトアクションでまだまだ歩兵火力が少ない時代で。
作者がサブカルチャー方面に属している点も含め、「ポスト皇国の守護者」キターと小躍りしました。こう、固苦しくなりすぎない軽さが出る信頼感的な。楽しませてくる的な。

で、およそ一巻の半分くらいをついやした男だらけの戦役を楽しく読み終え、本編?スタート。
うーん、ヒロインのオレーナが舞に見える。懐かしい。いえ、「自覚ある貴族の令嬢」にさほどパターンがあるわけでもないのですが、
一巻はいろいろ異文化コミュニケーションものとして楽しめました。新田の目的も国から下命されて単純なラブコメにならない路線も固まったので。
連載前提とはいえちょっとスピードが遅いかな?程度に少し気になったぐらいで、キャラよりストーリーが楽しみな話でした。
当時の時代を味わえる部分と、建国という面白そうな要素にかなり惹かれました。

続いて2巻。
…これ、「遥か凍土」ってかの地に到達するのが「遥か」すぎる、7巻で目的地に着く旅行物なのかな?という懸念がふつふつと。
気楽な船旅が一転陸路の乗馬、大陸横断になりおうせました。
まあ、でも新キャラもどちらも好みで、よい。です。全体的にいろいろ割り切ってる感があるので精神年齢高めな味があるキャラクターで、学生ものでなければこれぐらいがいいよねって造形がちょうどいいです。
グレンはなんとなく「エマ」のハキムでイメージしました。インドとイギリスに見守る役周りのイケメンなので。今のところ新田よりグレンが好きです。
旅路については一応、あとがきでこの後の予定が語られていたので、7巻使ってロシアを目指す話にはなりそうにないです。やっぱり一巻のあとがきも気になる…
ジニも可愛いし乗馬もできるし、いろいろ都合がよいですね。

ということでちょっと「都合がいい」ところが鼻につきます。今とのところ、仲間は有能、襲撃者は弱く、新田に都合がよい。転結が国づくりの参考になるのも都合がよい。船旅から陸路になったことすらも、消え往く「騎兵」にとって都合がよい。
今回のジニも加えて女性からの好感度が高いのも…この部分はちょっとご都合すぎるというか、サブカル・ギャルゲーハレム的な女性キャラ感を二人から感じるのですが…
その分を最初期の藤子の振る舞いで、作者が書く女性は決して男に都合が良い存在ではないと示している、と解釈して打ち消しています。今のところは。
一巻のオレーナ時点から新田に好感を抱く理由がちょっと唐突感あったので…さっさと偽装なりで結婚して旅や国づくりに集中してもらえればと。幸いなのは新田がまだ不快感がないキャラクターなので、まだ大丈夫。

あと、「ぶっきらぼうに」のやりとり。嫌いじゃないんですが、一言セリフで三行とられるのがすこしもったいなく感じるので一行にまとめてもらえるとベネかと。

それはそれとしてそこそこなオレーナに対して盛り盛りなジニが好きなので上手く扱うかゲスト扱いで手早くお別れして欲しい。あざと可愛い。
オレーナはですね、新田がですね。最初は建国のためにオレーナの地位が必要かと思ってましたが、読んでいるとなんだか新田一人でやるつもりなのかあくまでオレーナは送り届けるのが最終目的にも読めてしまって、よくわからないです。
求愛といなし続ける関係は少なくとも極秘命令明かしてさっさと一歩進展して欲しいところ。


アジア情緒が思ったより楽しいです。
ラノベテイストでちょっと上目というベストラインを突いている。文体も主人公メインの三人称?
不安視していた奥深い世界の謎っぽい描写もゼロなので。
史実かファンタジーかは世界史の知識がないので不明なのですが(クロパトキンをオリキャラだと…)史実でも前提知識ないから逆にネタバレなしで楽しめるのかなと。

そういえばイラストは島風ちゃんの人ですね。ゼロから始める魔法の書のときは結構話題になってた気がしますがこっちは知りませんでした。
挿絵は…イラストレーターっぽいイラストですね。綺麗ですが、のぺっとしているので、もうちょっと汚れた感じか躍動感あるもののほうが雰囲気に合うのかなと思いました。

新田のスタンス・敵役の描写しだいでは逆転もありそうですが、今のところは楽しんで読み続けれられそうです。