かのくらかの

かのくらかのが送るかのくらかの。と言われたい。娯楽感想日記。

ネタバレを含みます。

桜坂洋 All You Need Is Kill 感想

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再読。

初読は桜庭一樹と間違えて、でも内心違うだろうと思いつつ、安倍吉俊の表紙に誘蛾されて読みました。

映画化すると聞いたときはまさか!でしたねー。
その映画も地上波で見たうえでの再読です。
大体感想は初読と同じでした。

ザ・ライトノベル

読み返してすぐ思い出したのが、すっごい日本の、ライトな小説だなあという感想。
ミリタリーでSFな雰囲気なのに、キャラ造詣がすごく日本。
特に女性キャラの容姿描写から言動・行動が。
特に特にシャスタはテンプレ過ぎますよね。(フィギュアの造詣のくだりはメタというかお前らが言うのか!て気分でした)
それは魅力や可愛さに繋がっているものの、ハードなものを期待していると拍子抜けを受けるぐらい。
再読ではそれゆえになんでこれがハリウッドで受けるの…?
と疑問になるが、そういえばその辺は跡形もなかった。
でも原作としてチョイスされたときにどう評価されたか気になる。

ループものということで攻略ルートを示唆するギャルゲー的意味でもわざといぐらい可愛くしてるのかなあ。
でも時間も紙幅も無いしね。踏み込まないんですけど。
「そういえばスーパーダッシュ文庫だった」
ということを思い出せ、キャラの馴染み深さのおかげでサクサク読めるんだと思う。
フェレウやヨナバルも含めてね。

想定外のループもの

ループものといえば、主人公の行動によって未来が決定して、繰り返しの中で行動と結果を観察し、最適行動を見つけ出すパズル的ものを想像します。
映画版が大体それですね。

でも小説は(理由があるが)そうではなくて、毎回戦場の様相が変わる。
主人公は良い行動を探すのではなく、出撃回数を増やすことで「経験を積む」ことを目的としています。
いわばシレンとかのローグライク系ですね。
ギタイ側も行動を最適化していくのでこの方向性はあっているんですが、
そうと知らない低ループからキリヤが(基地は別として)終始パズル的解を取ろうとしないのは自分と違って意外でした。

「ループしているから≒勝てるまで戦うから、強い」
ではなくて
「経験豊富な古参兵だから強い」
が徹底している。
ループしているから敵の行動が分かるのではなく、何度と見てきた単純な敵の行動だから分かるしかわせる。
ループ回数で見ると少なく思えるが、150~200回戦闘したと言われるとキラーマシーンになるのもうべなるかな。

今回も騙されたリタさん

ループのルールについてはSF班ではないので疑問もありますが置いときます。
リタは今回ループしてないということでいいんですよね?
でも最後、梅干の種を吐き出すところで、リタも別軸でループしてて、してないフリしてラストまで導いてるんじゃないかなー
という疑惑を、確か初読も今回も洞察してました。
だって最後のループの新密度の上がり具合や行動、(泣く以外(これも演技と深読み))落ち着きっぷりが怪し過ぎなんですよね。
あんなに同士を求めていたのに事情を説明されてあの選択肢を、少なくとも表面上に躊躇を微塵も見せずに短時間でやりきるのが…

悲しいぐらい覚悟決まってる。
だから、たぶん普段ならもっとキリヤのループ部分読ませて!ってなりそうだけど、リタ編も大分好きです。

映画版ではトムが逆にあるシチュエーションを経験していないフリをしていたので、原作の反転かな?と疑惑を勝手に深くするトラップになりました。

ラストは…

好きなんです。しっかりもろもろ繋ぎきってのベストなエンドだったと思います。
しかし…
あだ名のせいで名前の逆算臭が際立って、そこがちょっと鼻について残念ポイント。
あそこで一気にフィクションだって気持ちにスーっと引かされるんですよね。
まったく無関係なあだ名だったら本当、終わりは文句なしでした。

あと残念なの!

ギタイのビジュアルが分からない…
溺死したカエルと連呼されるが棘皮生物寄りでもあって、イメージが付かないんですよね…
安部氏の画風なら合いそうなのでイラストがあればよかったんですけど…
小畑版では書かれているんでしょうか?
ここが毎回残念!

まとめ

ガンパレが着想といわれると納得。
ただしループものとして入ると期待と外れるかも。

全体としてはミリタリー臭とギタイの設定の面白をとがっていくキリヤ目線で、
ラノベとして非常に読みやすくまとまっている。
しかもただ軽いわけではなく、全体を通して孤独な寂しさが漂っているので、読了感もじんわりとした、染み入る良さがあります。

評価は3.5の4かなあ。
熱心には言いませんが「良い小説」と言いたい。
大好きとは言わないけれど、また数年したらふと読み返したくなる気がする本です。