かのくらかの

かのくらかのが送るかのくらかの。と言われたい。娯楽感想日記。

ネタバレを含みます。

野尻抱介 ふわふわの泉 感想

起業するところまでは間違いなく星5だった。
だけどいきなり3年後に飛んで、脈絡ない地球外生命体を出してと、こりゃダメだ。

「高校生の泉」が偶然にも夢物質を生成、量産化に成功して…
と、あらすじからは高校生の低スケールですごい物質をどう扱っていくのか?が主題に見えたんだけど、
結局高校生成分は一瞬で終わって、後はいつものSF。一気圧下で空気より軽い物質ができたら社会はどうなるかって思考実験がメイン。
そうなると後半の「ふわふわ」思考は作者が書きたいことを書くための誘導路みたいに思えて、そこに泉というキャラクターは存在しない。
いわば導入詐欺ですねえ…
これなら普通にいち研究者が発見したってあらすじのほうが最初からそういう話として受け入れられた。
まあ、ただ、野尻Pの普段の作風なので、こちらが過剰に低スケールを希望し過ぎたきらいはある…かな。

でも地球外生命体は擁護できないぐらい唐突で、「ふわふわ」とも関係ないですよね?
あれ要る?要らなくない?
南極点のピアピア動画は、まだ邂逅の理由付けが納得できたんですよね。
でもこっちはダメ。
だから、南極点のピアピア動画が焼き直したというか、こっちが荒過ぎるプロトタイプというか。
本当、作者が何をしたかったのやら…。「書きたかった」なら納得できるんですけど、SF作家ってもっとなにか理由もってそうで。別の理由ならそれはそれで下手って評価になってしまって…。

とにかく星2。想定を悪く裏切るつまんない作品です。
南極点のピアピア動画を先に読まなかったら評価が上がったかもしれませんが、逆にこれが入り口だと他の野尻作品には手を出さなかった可能性も高い…。

二人のふわふわ再現方法のアプローチの違いや、ふわふわ粒子の分かりやすいたとえ方や、町工場の人々とのやりとり、「空への落下」、「ふわふわ上で窒息死」など面白い点もあるのですが、本当にもったいない作品…。