かのくらかの

かのくらかのが送るかのくらかの。と言われたい。娯楽感想日記。

ネタバレを含みます。

佐藤大輔 皇国の守護者 08 楽園の凶器 感想

サクサクー

事変開始です。
この事変はもろもろの株が下がる巻でもあります。

まず丸枝くん。
最初は純朴な新米士官だったのが、皇都に戻るとちょっと歴戦風をかもし出すハシカ士官かつ新城の信者となって…
この巻ではかなり俗っぽい面を見せます。出世欲の原動力が個人副官だったり。
前巻までもどちらも凡人そうといえばそうですが。これも人間か。
草浪も前巻で愛妻家を見せ付けたと思ったら、それが守原への復讐心まで昇華されうるとは思ってもいませんでした。
まあ単純な恨みのみでの裏切りではないですし、そもそも裏切りと言えたほど計画自体は裏切っているわけではないのですが…
そこがまたずるいところですね。

新城も姉(あに)まで抱く必要は…というのはどちらかというとストーリー(作者)への評価落ちでしょうか。
皇室のお立場も分かりますが、抱かせたくて抱かせた感があります。
また、篤胤のエピソードとして小児性愛の二次創作への表現の自由を持ち出すのは、作者の属性も合い合わさって強く、
メタとしての現実を意識させられて好きじゃあなかったです。

逆に佐脇くんは同情大でした。
守原に内通していたのは佐脇くんだけだと思ってたんですが、一族丸ごとだったんですねー。
そしてすべてを佐脇くんひとりにおっかぶせた。と。
彼の一番の不幸は弟が居たことでしょうか…描写はぜんぜんありませんが、たぶん兄に似て優秀な男なんだと思います。小奇麗にまとまった俊兼をひとまわり小さくした弟。と想像しております。
彼が居たから廃嫡できたわけで…
好きではないですけど、哀れですね。

軍備に関しては特記するようなこともなく。
空挺の伏線を張る程度ですか?
ものすごく退屈なわけではないのですが、皇都編はとくに書くことが無くて、人物中心になっちゃいますねえ。
他方、海軍は常に風通しがよくて清涼剤になります。

出来としては前二巻と同じですが、今回はちょっと作者が垣間見えちゃって評価下。
ただ珍しく千早目線が書かれたのは加点でしょうか?
長かった準備編も終わり、ようやっと、しかし終わりの次巻へ続きます。