かのくらかの

かのくらかのが送るかのくらかの。と言われたい。娯楽感想日記。

ネタバレを含みます。

西村悠 僕と彼女とギャルゲーな戦い 感想

mwbunko.com

妄想ジョナさん。の西村さんの作品です。

作りはですねえ。
実にお手本的な兼業作家の本業題材小説
というものです。
そういったジャンルを他に読んでいるわけではないのですが…そんな雰囲気を感じました。
たとえば現役医者が書いた医者が主人公の本とか、
銃やバイクやカメラにハマっているひとが作中でそういったものを書いているときのような香りがします。(特に開発環境の下りとか)

本作ならシナリオライターが書いたシナリオライターが主人公のお話ですね。
ADVゲームの制作現場をギャルゲー未経験な主人公を通して紹介していきます。
単巻ということもあって、紹介も展開もサクサクサクと、これもお手本のように。
主人公は最初サブライターとしてヘルプ参加します。
が、経験を積むかと思ったら急遽メインライターとなり、ゲーム一作を通していろいろ悩み人とつながり人生とも向き合い作品完成まで走り抜けます。

うーん、素晴らしい完結具合。
最初はトラブル込でSHIROBAKOっぽい雰囲気なのかな?と思ったけど、すぐに最短で展開する短距離走の話として扱いました。

最短すぎてちょっと同僚との絡みが薄いのですが、キャラをちゃんと立てているので逆にもったいない気がしました。
んーでもそのキャラのわかりやすさも走り抜けやすさに貢献しているとも感じるので痛し痒しですね。

もう一つきちんと抑えていて良かった点は主人公の長所ですね。
主人公はテキストを書くスピードが早い…らしいです。
ここはちょっと普通の人の分量が提示されていないので、漫然と早いことしかわからないのがややマイナスでしたが、主人公がすごいと思っていない長所があるのは現代風かな?
ただ、ギャルゲー未経験ということでなろうみたいなすごい文章を大量にかけるチート系ではなく、終始修正指示が山のようにくる形が終わりまで続きます。
そこは好き。
どんなに頑張っても初作品らしさが出ていて、やる気があってもすごい上達するわけでもなく。
でもその修正が必要なテキストが埋もれがちな職業の制作・進行の先輩との接点になるというのはひとつでいろいろ美味しいところでした。

終盤の主人公ののめり込み具合にはちょっと感情移入が難しいかもしれませんが、まあそこまでのお手本のような流れからちょっとひねった感もあるし、悪くはない…かな?

ということであっさり読める3つ星。
悪い意味ではなく「面白い。ではなく読める。が優位の作品」。
お話がちゃんとできていてゲーム制作の雰囲気も味わえる佳作。
いい意味で一度読めば満足できる作品。
久しぶりにライトノベル読んだーって気分になれました。