かのくらかの

かのくらかのが送るかのくらかの。と言われたい。娯楽感想日記。

ネタバレを含みます。

南極点のピアピア動画 感想

あ、はい五つ星。

面白っ。

(ニコ動の騒動で読み出したわけではないです)
(なんて書いていたら退任しちゃいました)

www.itmedia.co.jp

野尻P

ご存知ありません。
Pとしては。
小説は沈黙のフライバイのみ読みました。だいぶ気に入ってます。
あとちょいと前に炎上気味に話題になったりしましたっけ。何でかももう忘れましたけど。

それともうひとつニアミスエピソードとして、大学の教授が図書室にある面白い本としてロケットガールを挙げていたんですよね。
当時は学生に媚びるというか、興味持ってもらうと先生も大変だなあ。と。
あらすじから女の子が宇宙目指すとかないわー。
なんてスルーしてたんですが、今更ながら読んでいればよかったなー!
と沈黙のフライバイ読んでから後悔したんですよねー…

良い意味と悪い意味の気持ち悪さ

2作しか読んでないのに何を語るやですが。
野尻さんの作品の科学者?理系?技術者?的人たちの情熱がすごいんですよね。
理系マンセーというかなんというか。
リアリズムとロマンチシズムのダブルエンジンで第二宇宙速度出すみないな(SF読まない人の雑なたとえ)
振り返ると沈黙のフライバイ全体は結構静かめなんですが、最後の蜘蛛の糸のせいか読後感がそんな感じ。

で!この南極点のピアピア動画も、もう最高に技術者・ニコニコ技術部の連中が気持ち悪い。
それはそれは良い気持ち悪さなんですが、今回はそれに加えてピア厨?ボカロ厨?
的盛り上がりもあって、しかもそもそもボカロの小隅レイが世間一般に大いに受け入れらているという設定が気持ち悪い。

やだよ良い大人がボカロに傾倒して職権乱用なんて…なんてね。
まあ私は「ボーカロイドは楽器」「過度なアイドル化・偶像崇拝すんな」的古臭いスタンスだと思うんで、たぶん想定読者からかなり辺境に位置していると思う。(ついでに技術部も見てないんで)
なので、まあ特にラスト二編はキツいといえばキツかったのですが、前者のSF的熱狂・ノリが作者の味だと勝手に思っていて、そのパターンがそのままピア動に使われているのかーと思いながら読んだ。
学者側は良い意味で気持ち悪い。レイ駆動の連中は悪い意味で気持ち悪く、それが転じて良い意味で気持ち悪い。
非常に複雑な心境なんですが、盛り上がりは沈黙のフライバイの比ではないので、非常に楽しめました。

(これ読み直したら何しゃべってるか訳わからんやつや……)

成功の連続

読んでいて非常に盛り上がる今作。
その理由のひとつには、物事がほぼなんでもとんとん拍子に成功することがあると思うんですよね。
少ない読書量では有川浩さんによく感じる点なんですけれど、
やること成すことが上手くいきます。
失敗すらも後の成功への布石が確約されているので、どんどん読んで、成功して、エンドルフィンどばどばー。
南極点のピアピア動画にいたっては失敗らしい失敗なかったんじゃないかしらん?
そんなこんなでもう登場人物はハイテンションだし、物事は壮大に上手くいくしで読み手が止まりませんわ。うはうは。
SFってお堅いイメージがありあまり手を出せない領域なんです。
でもでも、この作品はこんなに読みやすい。
わかりやすく面白いことがポンポン飛び出る。
それでいてSF感?を十二分に摂取できる。

ありがたやー!

(でもゆりかごから墓場までの2部も好きですよ)

捨ててしまおう

君を探し彷徨う MY SOU。
さて、もうちょっと作品内容に触れるとしまして。
この作品は4つの連続した短編集になっている。

それぞれおーざっぱに

…で良いんでしょうか。
まあそんな感じなものがメインっぽく描かれます。
でですよ。ラストの統括書き下ろしは除いてみても、前三つ。
それぞれの作品で超超超面白そうなことがおきるんですよね。
もうそれ単体で書いちゃってよ!と言いたくなるものが。
が!その面白そうなことがうっちゃられ!あるいは前菜やツールかのように脇に置かれ、前述のメインディッシュが出てくるんですよねー。
ものすごくもったいなくて、ものすごく豪華だなあと思っちゃいました。

南極点のピアピア動画

ここで出てくるのは準自己増殖する工場。人が人レイヤーになるまで行っちゃう自動化。
しかもOSS(OSH)をフル活用という胸熱(いまの人は使わないかね?)。
ついには人が不要になり、機械が反旗を翻すのか!?
と読んでいたら、なんとその使い道は学生が廉価にロケットを飛ばすための手段だったのだー!
(流れとしては最初から宇宙でしたけどね)
イデア凝らしてなんとか宇宙へ行く算段をつける話でも面白かったと思います。
大風呂敷と蜘蛛の糸みたいなの好きです。
でも、あの工場の行く末魅力的じゃないですか。
算段が面白そうでそっちが気になるじゃないですか。
動画で報告し投げ銭で運用されるプロジェクト面白そうじゃないですか。
でも、主題はロケット作りなのです。
もちろんフル活用されるのですが、何ちょっとロマンチックに〆てんじゃいと。

コンビニエンスなピアピア動画

こっちもファミマ入店音という懐かしネタをフックにWPI、ワイヤレスプログラミングインターフェースかな?
を使い、コンビニのネットワークを使った大規模なマーケティングを行うという面白い設定が出てきます。
新曲プロモの成功を収め、さてさてコンビニの強さを見出して次はいったい何を展開するのだ…!?
と思いますよね。思いました。
が!まさかの!殺虫器!の中の蜘蛛!
もちろんコンビニの物流ネットワークがキーにもなるんですが、
そうなるの!?とびっくりしました。
もうね、蜘蛛がCNT吐くとかね。それで軌道エレベーターとかね。
出だしからは想定不能ですよね。
で、最初のプロモーションの起業はどうなったかというと…
この蜘蛛タワー計画の資金源と成り果てました。
数億規模でつぎ込んでいる感あるので裏で大成功しているはずなんですが、
かまいやしません。大事の前の小事。切り捨てていく。

もう最近風に言うと止まるんじゃねぇぞ...💃って感じ。
助走板(ブースター?)が偉大すぎてメインテーマが高レベルの面白状態でスタート切るのはずるすぎる。
こんなん踏み台にして面白くない訳なし。
…ラストの展開は笑いましたけど。

歌う潜水艦とピアピア動画

ちょーっといい大人のレイ好きが気持ち悪いレベルなんですが。
それを差し引いても鯨との対話がやばい。
私ああいうの好きなんですよね。
潜水艦を仲間と思って、単純な言語でコミュニケーションをとる、プリミティブな良さがある。
もう潜水艦に無茶な動き要求する人間とか漁をほめる鯨とか、良すぎてね。
コミュニティーの終わりまで見届けてえー…と感動しながら読んでいたらですよ。
やっぱり捨て去るんですよね。
え、まさかのこっから捨てられて鯨社会から知性を獲得したAIとの対話が…!?
なんてのを予想していたら、それをはるかにしのぐ急展開っぷり。
長門に例えるのはやめろ(先取り)ふわふわの泉いつか読みます(決心)

いやー…どう転んでも鯨の話の続きを読みたいと思うだろうとの目算を見事にひっくり返してきますよね。
でも、鯨も気になるんだよ…。急に仲間が抜けるとかさ…。悲しいじゃん…。

分子アセンブラがさらっと流され、言わんとすることはわかるような気がしますが、すげー。

星間文明とピアピア動画

川上会長や津田大介は出るだけで笑うので卑怯。

これはそんな捨てるようなものは思いつかないんですが、各作品の感想みたいになったのでここで。
ラストなんですけれど、自分の中ではちょっと消化試合というか盛り上がりに欠けちゃいました。
「自分を複製して社会に溶け込み文化を理解する」
ために、いかに展開するか(をピアンゴが考える)よりあーやきゅあの存在自体が気になりすぎるっ。
って意味では似たようなもんですかね。

一人につき一人?ボカロ似の万能ロボが手に入る感じの世界が別に面白そうじゃなさそうというのと、
UCG、とりわけボカロ界隈のUCCに興味が薄いのが原因かな。

深層?潜在知をリンクしているとはいえ、いや無関係に、2億にまで増えただけでもいろいろ恐ろしいだろうなーと思いました。
浅学では火の鳥のロビタみたいな感じでしょうか。全然違った。

もう一歩飛び越えてちょびっツとかイヴの時間DearSみたいになると…ジャンルが違う。

うーん、政府筋から逃れる話なのに、人というかユーザーを信じる話みたいな。
ガンダムニュータイプ論みたいなふわっふわっな感じがSFらしく多少ハードに進行する…だろうか。難しい。

前3編が良すぎたのがいけないですね。うん。

電力無しの複製のスピード感が良い。

解説

これが最悪!!
いや退陣とかの時事と関係なくね。
あの感動的なラストと心地よい読了感からのですよ。
まさかの川上量生と書いてご本人と呼ぶ人が解説を書く。
いわんや何を書くのか期待大で読んでみれば…

…うん…
まさに

読者の中には、この解説を読んで違和感を持った人もいたようだ。だが楽観的すぎたり無知だったりした部分にインサイダーからの批判が加わったことで、文庫全体としてはITビジネス書としての価値を持ったと思う。

の口なんですがねぇ…。
楽観的なのは作中から読み取れますし、それに冷や水ぶっかけても。
いや、P2Pが帯域圧迫とか面白いですけど。
それ差し引いてもあれは解説ではなくて言い訳でしかないでしょうと。
書き下ろしが一種のラブコールであったとしてもニコニコ動画の話に終始されたのは読後の読者として、また別の方の解説を読む機会を奪われた身としてはつらいものがありました。

ま、本編が悪くないので解説で星を減らすことにはなりませんでしたが、非常にもったいない人選でありました。


まとめは特になし。
だいたい書きたいことは書いた。面白かった。
また読みたい。#2 良い 南極点のピアピア動画

筆者解説

d.hatena.ne.jp