かのくらかの

かのくらかのが送るかのくらかの。と言われたい。娯楽感想日記。

ネタバレを含みます。

芝村裕吏 遥か凍土のカナン 01-02 感想

遙か凍土のカナン2 旅の仲間 (星海社FICTIONS)

遙か凍土のカナン2 旅の仲間 (星海社FICTIONS)

ガンパレの芝村をやってる人ですね。
近年は執筆業に熱心で、小説を手に取るのは初めてです。
マージナル・オペレーションとどっちか迷ったのですが、あっちはまだ改やらFやらややこしそうなので7巻完結のこちらで。
うっすら調べた感じではこの遥か凍土のカナンもマージナル・オペレーションとつながってそうですが…この年になって世界の謎を萌え追う風追い人にはなりたくはありませんな…
ガンパレは…榊版が…士翼号入手ぐらい?九州奪還で止まっているので。あっちも読み直すなら最初からですね…

ということでカナン。
なんと一巻分まるごとweb公開らしいので助かります。あとがきないのでそこでかなり書籍が欲しくなりますな。

sai-zen-sen.jp

前提知識なしで挑みました。
最初は純ファンタジーか今はやりの異世界転生なのかなー。と。カナンってヒロインの名前かなー。と。
そしたらまさかの日露戦争塹壕戦。
死んで転生かと思ったら跳ね返して帰国ですからね。なかなか不意打ちでした。
でも、面白いですねー。冬の陣地戦は好きです。
前装式とはいきませんがボルトアクションでまだまだ歩兵火力が少ない時代で。
作者がサブカルチャー方面に属している点も含め、「ポスト皇国の守護者」キターと小躍りしました。こう、固苦しくなりすぎない軽さが出る信頼感的な。楽しませてくる的な。

で、およそ一巻の半分くらいをついやした男だらけの戦役を楽しく読み終え、本編?スタート。
うーん、ヒロインのオレーナが舞に見える。懐かしい。いえ、「自覚ある貴族の令嬢」にさほどパターンがあるわけでもないのですが、
一巻はいろいろ異文化コミュニケーションものとして楽しめました。新田の目的も国から下命されて単純なラブコメにならない路線も固まったので。
連載前提とはいえちょっとスピードが遅いかな?程度に少し気になったぐらいで、キャラよりストーリーが楽しみな話でした。
当時の時代を味わえる部分と、建国という面白そうな要素にかなり惹かれました。

続いて2巻。
…これ、「遥か凍土」ってかの地に到達するのが「遥か」すぎる、7巻で目的地に着く旅行物なのかな?という懸念がふつふつと。
気楽な船旅が一転陸路の乗馬、大陸横断になりおうせました。
まあ、でも新キャラもどちらも好みで、よい。です。全体的にいろいろ割り切ってる感があるので精神年齢高めな味があるキャラクターで、学生ものでなければこれぐらいがいいよねって造形がちょうどいいです。
グレンはなんとなく「エマ」のハキムでイメージしました。インドとイギリスに見守る役周りのイケメンなので。今のところ新田よりグレンが好きです。
旅路については一応、あとがきでこの後の予定が語られていたので、7巻使ってロシアを目指す話にはなりそうにないです。やっぱり一巻のあとがきも気になる…
ジニも可愛いし乗馬もできるし、いろいろ都合がよいですね。

ということでちょっと「都合がいい」ところが鼻につきます。今とのところ、仲間は有能、襲撃者は弱く、新田に都合がよい。転結が国づくりの参考になるのも都合がよい。船旅から陸路になったことすらも、消え往く「騎兵」にとって都合がよい。
今回のジニも加えて女性からの好感度が高いのも…この部分はちょっとご都合すぎるというか、サブカル・ギャルゲーハレム的な女性キャラ感を二人から感じるのですが…
その分を最初期の藤子の振る舞いで、作者が書く女性は決して男に都合が良い存在ではないと示している、と解釈して打ち消しています。今のところは。
一巻のオレーナ時点から新田に好感を抱く理由がちょっと唐突感あったので…さっさと偽装なりで結婚して旅や国づくりに集中してもらえればと。幸いなのは新田がまだ不快感がないキャラクターなので、まだ大丈夫。

あと、「ぶっきらぼうに」のやりとり。嫌いじゃないんですが、一言セリフで三行とられるのがすこしもったいなく感じるので一行にまとめてもらえるとベネかと。

それはそれとしてそこそこなオレーナに対して盛り盛りなジニが好きなので上手く扱うかゲスト扱いで手早くお別れして欲しい。あざと可愛い。
オレーナはですね、新田がですね。最初は建国のためにオレーナの地位が必要かと思ってましたが、読んでいるとなんだか新田一人でやるつもりなのかあくまでオレーナは送り届けるのが最終目的にも読めてしまって、よくわからないです。
求愛といなし続ける関係は少なくとも極秘命令明かしてさっさと一歩進展して欲しいところ。


アジア情緒が思ったより楽しいです。
ラノベテイストでちょっと上目というベストラインを突いている。文体も主人公メインの三人称?
不安視していた奥深い世界の謎っぽい描写もゼロなので。
史実かファンタジーかは世界史の知識がないので不明なのですが(クロパトキンをオリキャラだと…)史実でも前提知識ないから逆にネタバレなしで楽しめるのかなと。

そういえばイラストは島風ちゃんの人ですね。ゼロから始める魔法の書のときは結構話題になってた気がしますがこっちは知りませんでした。
挿絵は…イラストレーターっぽいイラストですね。綺麗ですが、のぺっとしているので、もうちょっと汚れた感じか躍動感あるもののほうが雰囲気に合うのかなと思いました。

新田のスタンス・敵役の描写しだいでは逆転もありそうですが、今のところは楽しんで読み続けれられそうです。

夏海公司 葉桜が来た夏 01 感想

久々に読むのがつらかった。

一言でまとめるなら
「主人公の言動不一致が耐えられなかった」
あるいは
「野望と正反対の枠組みの中に居つづけ、なのに野望を公言して憚らない」
って感じでしょうか。
本文中で最後の最後にそれが肯定的に書かれますが、その時点でもう心が離れていたので…

作品自体は前から落ちついたイラストと5巻完結という円満ムードから興味はあったのですが、
カレーなる辛口Javaな転職日記でおなじみ「なれる!SE」の作者だということで、そっちを読みたいがゆえにデビュー作から読んでおこうと手を出しました。

第14回電撃小説大賞にて選考委員奨励賞受賞作品

らしいです。

さわり

空から十字架が落ちてきて、人間より強い美女ばかりの種族とファーストコンタクトしました。
両種族の未来のためにボーイ・ミーツ・ガール。

はい。

外来種アポストリは強くて銀に弱くて吸血するということで吸血鬼モチーフですね。
吸血=性行為に繋がる部分は亜人ちゃんは語りたいでもありましたが、下僕を増やすイメージ以上に元ネタがあるのかしらん?

はじめのシチュエーション的にはDearSに似ているなと思いました。
ヒロインの葉桜はまったくの無知ではなく座学系世間知らずタイプでしたが。
葉桜と出会ってからは怪力・赤目・金髪ということでアルクェイドなイメージでしたね。月姫やってないんですけどすごいイメージ強かったです。

ストーリー

人類とアポストリとの出会いから19年後。
親アポストリとして重要な政治的立ち位置に居る父を持つ主人公は片腕のアポストリに母親と妹を殺された現場を目撃し、アポストリ全体を強く憎みつつ6年がたち、高校生2年生となり政治的に葉桜と"共棲"することに…。

というのが舞台からの主人公のストーリーですね。
この「復讐」が根底にあるのが難しくなっているんですね…。

琵琶湖に落ちたアポストリの移民船のせいで「居留区」という壁に区切られた地域で生れ落ち、”共棲”の義務などが生じる特殊な扱いになっているものの、若者たちはアポストリとのファーストコンタクト以後に生まれていて、出会ったときの戦闘状態を知らない世代って扱いです。
だからアポストリに好感を持たないというのは大人世代ではまだまだ共感もあるのですが…

「復讐者」としての主人公があいまい

<片腕>を見つけ出し仇をとることが主人公の目的です。
そんな高校二年生の主人公の南方学くんの希望進路とは…

「アポストリが憎いから居留区外の大学に進学したい」
です。
…ん?

なにか、おかしい。

学くんは体を鍛えております。来るべき、人より強いアポストリの<片腕>と対するためです。
アポストリは建前上、「居留区」にのみ住んでいることになっています。

そんな居留区を学くんは出て行きたいそうです。
んーと、えーっと、そうね。
<片腕>を探すなら、アポストリを倒すなら、アポストリに近づいて情報を探ったり弱点を探ったりしたほうがいいのでは…?

父親ともソリが合ってないのですが、大学の資金は親便りになるのでしょうか?
苦学生するのかな?
復讐する暇できるのかな?

結局、高校から外部への受験許可?というものが降りず、進路がいまひとつ定まらない学くん。
帰り道に共棲者にけしかけられたアポストリと喧嘩し、その強さを目の当たりにします。
…アポストリさんとってもお強いです。素手で街路樹をなぎ倒します。
後々ではスクーター並みに早く走れ、銃弾を腕に受けて動きに支障がない程度に痛がる姿が描写されます。
…学くん勝ち目無くないですか?
いちおう銀に弱いって設定があるのですが。学くんも欲しがるものの居留区への持込は厳しく禁止されているそうで。当然ですね。
身体能力的にも銀のナイフ程度では無理そう。銀の弾丸などで?ウォルターに頼むのかな?
特殊兵装っぽいものが配備されているそうですが、一般人には手に入らないでしょう。いわんや高校生をや。

そんなことがあったあと、普通の人よりはやく葉桜との共棲を持ちかけられるのですが…学くんは断固拒否です。

うーん、主人公はアポストリが嫌いで、仇のアポストリを私刑(家族をアポストリに殺されたことを政治的に公にされていないので)したいのです。
でも、アポストリに関する知識などは徹底的に身に着けようとしないのです。

「キミ、本当にアポストリのことを何も知らないのだな」
「悪かったな」
 学は唇をへの字に歪めた。確かに、彼はアポストリ関連の授業をまともに受けていない。
学校では彼が必要とする知識――アポストリの弱点や戦い方は教えてくれなかったし、実習でアポストリと交流するのもわずらわしかった。二年に入ってからの特別カリキュラム、共棲の事前オリエンテーションにも顔を出していない。結果として、学のアポストリに関する知識はひどく偏ったものになっていた。

高校生だから、居留区民だから、政府筋の父親を持つから、出来ることが限られると言うのはわかります。
でも、学くんの行動には一貫性がない。
彼を知り己を知れば百戦殆うからずといいますが、学くんは弱点は知りたくても基本的知識は欲しくないと言います。
アポストリは憎むべき、攻略すべき敵なのか、それとも忌避すべき異種族なのかがブレブレに見えました。
まあ基本は忌避で<片腕>だけは、でもまだなんとかですが、最終的には葉桜というアポストリへの態度の軟化を通じて<片腕>への復讐をも諦めるので…

父親を含む親アポストリ側の援助にべったりな独り立ちしていない高校に通う復讐者という設定を素直に受け取れないのは私が年を取り過ぎたからでしょうか…?

「<片腕>を見つけて、<片腕>を殺して、<片腕>を切り刻む。それが俺の全てだ。他のことはどうでもいい」

葉桜のために一緒にプリクラをとった後、<片腕>の情報を手に入れた主人公の所信表明です。

軟化が早い

物語は主人公がアポストリを受け入れていく部分がメインなのですが、それも結構早かったです。
葉桜との関係は、読み間違ってなかったら大体
1日目:出会い。共棲拒否
2日目:二人で買い物。誘拐未遂を助けられて葉桜、銃創を負う。
3日目:葉桜体調不良で学くん心配する。
こんな感じです。間違っても一週間以内の出来事なはず。
で、3日目からの不調を案じて先の引用文のように知ろうとしなかった知識を遅ればせながら得ようとしているわけですね。
週末にはおめでたい報告が聞けそうかな
ってこれは好きなBBCSHERLOCKのセリフですが、交流回数にしては関係の進展が早いのが気になりました。
普通のボーイミーツガールならよいですが、何度も書きますけれど主人公の対アポストリ好感度はマイナスMAX近いですからね。
らんま1/2でももうちょっとゆったりした進行ですよ。
この進行の早さが、主人公の恨みの深さだとかが薄く感じる一助になってしまったのです。

危機意識の薄さ

このお話はファーストコンタクト時の戦闘から端を発する、(日本)人類全体的な政治的・テロル的な集団が重要な位置を占めるのですが、学くんは宿敵<片腕>を探すために第三者の手を借ります。
まあ高校生ですからね。一人ではおのずから限界がありますからね。

で、その手段は
「マスコミに居留区の特命全権大使たる父親の秘匿されているスケジュールを(定期的に)横流しする代わりに<片腕>を探してもらう」
うん。
やばいですよね。普通に考えれば協力者に扮した反アポストリ勢力の甘言ですよね。
でも大丈夫です。ちゃんと疑います。葉桜もちゃんと。

「こりゃ傑作だ、テロリスト、テロリストか。僕も色んな職業に間違われたけど、これは初めてだ。南方大使を暗殺だって? そりゃさぞかし良いニュースになるんだろうな」
 春木はサングラスを持ち上げ、目尻の涙を拭いながら手帳を開いた。一枚の名詞を取り出し、葉桜に差し出す。葉桜は目を瞬きながら名詞を読み上げた。
「日本合同通信・政治部記者、居留区担当……?」
「春木と言います、初めまして」
 男はにこりと微笑んでみせた。葉桜は狐につままれたような表情で、名刺を見据えている。
学は小さく鼻を鳴らした。
「二年くらい前から彦根居留区を担当しているんだ。親父やアポストリ関係を追いかけてる」
「南方大使の予定はトップシークレットでね、僕等も取材には苦労しているんだ。こうして学くんから情報をもらうことで、効率的に同業者を出し抜けるわけさ。ああ、もらった情報は取材目的以外には使用しないから、それは安心してもらっていい」
「……マスコミの……人?」
「ああ」
 学は頷いた。仏頂面で葉桜を見据える。
「テロリストじゃ……ないの?」
「あたりまえだろ、馬鹿馬鹿しい」

はい、ジャスト1ページでした。
めちゃめちゃ(マスコミを装った)テロリストっぽい
と思ったのはどうやら私だけのようで、以後疑いはありません。
むしろ本筋にもほとんど絡みません。
春木氏の真実はともかく、このやり取りで信頼を勝ち得たのがいかんとも受け入れがたくてですね…
アポストリの情報を探している高校生に対価としてトップシークレットの情報を欲しがる大人が近寄るとか怪し過ぎる。
葉桜もせめて名刺の名前をネットで調べるなど裏取りしてればまだ説得感が出るのですが。

春木氏は結局ほぼフェードアウトで真相はわからないのですが、襲撃事件のときも間接的に学くんが情報を売ってきた結果なのでは?と頭の片隅で引っかかり続けたのがしんどかったです。

<片腕>の正体

現在、居留区のアポストリは全員データ化されており、春木氏によれば偽造もなし。
現在までに記録上は片腕のアポストリは存在しなかったことになっています。

私は正体が明かされるまで、「<片腕>は人間」説をもっていました。
外見上の違いは美人を除けば目の赤さぐらいですからね。カラコン使えば人間がアポストリに扮することも、政治的に扮する理由も上手くつながるなと思っていました。

で、明かされた正体は
「生身と遜色ない義手をつけて人間の高校生として紛れ込んでいた19年前にMIAとなったアポストリ(反融和政策の人類団体に協力)(主人公の唯一の友人)」
でした。

ふーむ、図らずも人間とアポストリが相互擬態できそうな部分は当たっていましたね。
片腕の部分もオーバーテクノロジーの宇宙人ですからね。
データに現れないのもMIAだから。19年前だけどアポストリは外見の成長が止まるから高校生に紛れ込める。

学くんに近づいたのも父親目的。でもだんだん学くんに興味が出て…
というのもなかなか悪くはなかったです。

まあ<片腕>だと自分から明かして学くんに殺したくないから来るなというのは多少無理がありましたが。

ちなみに19年前のアポストリ側の損害は三万人。MIAがおきるなら<片腕>のような存在はまだまだたくさん居そうですね。
しかし人類側の二百万人という被害もとんでもない数字ですけどね。

<片腕>が肯定する学くんの生き方

さんざアンビバレンツな学くんの生活をけなして来ましたが、実はそこまで作者の計算のうちだったのです。
属する社会を憎みつつ暮らす学くんを、属していた社会の今を憎み望むべき流れにしようとする<片腕>さんが魅かれた理由はこうです。

「キミは私に似ていた」
「どういう意味だよ」
「君も私も望んでもいないものを愛せといわれた。私は終戦後の世界を、君は家族を殺した相手の同属を。私はそのジレンマに耐えられず、世界そのものから外れた。だが君は――」


「君は枠組みから外れることなく日常を営んでいた。それがとても興味深かった。


 どう答えてよいか分からず、学は沈黙した。彼が世界から外れなかった理由、それはひとえに彼が無力だったからだ。灯日のような力があれば、彼はアポストリ相手に戦争を始めていたかもしれない。

無力ゆえに望まぬ日常を営んでいたことを肯定するようなセリフですね。
また、学自身もちゃんとジレンマの中で生きていたことを示唆させる内面が伺えます。
もし、このあたりを序盤からちゃんと読み取ることができていたら、私は学くんを好きになれたかもしれません。
でもこのシーン、エピローグの3ページ前です。
ここまで、学をあまり好ましくないキャラクターとして読み進んで、やっとこさのこり20ページほどだと頑張って読み進めてきたのです。
残念ながら、評価をひっくり返すには遅過ぎました。
無力だから受け入れられる。というのは良い題材だと思うのですが、それをブレと受け取ってしまっていたのがひとえに私の敗因ですね。

葉桜のキャラクターは良かった

素直でストレートで好感を持ちやすいヒロインでした。
絡み辛い主人公に対して大健闘していたと言えるでしょう。
彼女にちょっとでも捻くれている部分があったら読了の自信はありませんでした。

葉桜以外も女性陣含め全体的に描写は悪くなく、春木氏も疑いはともかく大人の情報筋としてちゃんと描かれているわけですし。
若いコメディリリーフが不在なこと以外は特に言うことないですね。

まとめ

ごめんなさい、続きはないです。
主人公の復讐者の部分で辛かったのですが、復讐者でなくなった主人公に期待が持てない。

彼の行動をポジティブに受け入れられるならいいですが、基本後ろ向きな私には合いませんでした。
葉桜のキャラクターはとてもいいので、ボーイ・ミーツ・ガールとしては普通に良いかもしれません。

でもどちらかといえば二人の保護者の大人のやりとりのほうが魅力的だったので、この部分だけでも全然アリかもしれません。

ただ、「学と葉桜の物語」である限りは私はここで終えとこうかと思います。

なれる!SEは…どうしようかな…

中島敦 李陵 感想

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再読。中島敦すきすき。

時代背景の知識を知らなくても面白いです。実話ベースっぽいですが、知識無しでも大丈夫。文字数もそんなに多くないです。
単于が襲名制というか~~単于という称号だというのが初読ではしばらく「単于」としかでないので気づかなかった覚えが。

最初は少しとっつきにくいかな?いきなり出兵からの撤退戦なので、どんな話なんだろう?ってところが飲み込めなくて。
でも李陵の兵に慕われるその武名に恥じない行動にだんだん惹かれていきます。

そして場面転換して結構唐突に司馬遷の話になるんですよね。
武帝に阿る佞臣に対してさして友誼もない李陵の件について正論を述べる司馬遷
かーらーのまさかの宮刑
刑を執行され一人考え込む司馬遷のこの身から一切噴き出ることの無い煩悶。やり場の無い怒り。
人が出来ているゆえに正当な怨恨先を求めるものも終ぞ矛先定まらぬぐぬぬ
まさにぐぬぬ

あれ?主人公って司馬遷だったかな?ってなります。
結局彼は使命と形容してよいかもわからぬ何かに突き動かされ史記の執筆にのみ命を捧げることになります。
こう、かっこいい、とも違うしその境遇から憧れとも違うのですが、「凄み」がある。あ、ジョジョ5部アニメおめでとうございます。

それでまた戻って、捕らえられたものの単于に遇される李陵の話になります。
最初は国のために暗殺を目論見るものの、国の酷い仕打ちや単于たち匈奴と接するうちにだんだんと匈奴側についていって…という話。
ある意味王道ですかね。こっから祖国に響いた武名をもって匈奴の兵を率いて復讐。とか嫌いな展開じゃないんですけれど。
李陵はあくまで節度と忠を知る人物として描かれていて、読んでいて良い男だと思えるほどですね。忠君の士。
匈奴に決定的に寝返るのも国で家族を殺されたからですし、読者としてはもう裏切っても文句は言わないよ!ってほどでした。

が、ここで終わらないのが中島敦。って歴史小説なので違いますが。

第三の主人公、蘇武の登場です。
彼も匈奴に捕らえられるも、自決を行い、一命を取り留めさせられ、僻地へ無期限の追放をさせられても忠義を違えず心は漢の官であり続けました。漢の中の漢やで。

李陵は匈奴に降るように説得に行った際、なんともいえない気持ちにさいなまれます。

 最初の感動が過ぎ、二日三日とたつうちに、李陵の中にやはり一種のこだわりができてくるのをどうすることもできなかった。何を語るにつけても、己の過去と蘇武のそれとの対比がいちいちひっかかってくる。蘇武は義人、自分は売国奴と、それほどハッキリ考えはしないけれども、森と野と水との沈黙によって多年の間鍛え上げられた蘇武の厳しさの前には己の行為に対する唯一の弁明であった今までのわが苦悩のごときは一溜りもなく圧倒されるのを感じないわけにいかない。それに、気のせいか、日にちが立つにつれ、蘇武の己に対する態度の中に、何か富者が貧者に対するときのような――己の優越を知ったうえで相手に寛大であろうとする者の態度を感じはじめた。どことハッキリはいえないが、どうかした拍子にひょいとそういうものの感じられることがある。繿縷をまとうた蘇武の目の中に、ときとして浮かぶかすかな憐愍の色を、豪奢な貂裘をまとうた右校王李陵はなによりも恐れた。
 十日ばかり滞在したのち、李陵は旧友に別れて、悄然と南へ去った。食糧衣服の類は充分に森の丸木小舎に残してきた。
 李陵は単于からの依嘱たる降服勧告についてはとうとう口を切らなかった。蘇武の答えは問うまでもなく明らかであるものを、何もいまさらそんな勧告によって蘇武をも自分をも辱めるには当たらないと思ったからである。
 南に帰ってからも、蘇武の存在は一日も彼の頭から去らなかった。離れて考えるとき、蘇武の姿はかえっていっそうきびしく彼の前に聳えているように思われる。
 李陵自身、匈奴への降服という己の行為をよしとしているわけではないが、自分の故国につくした跡と、それに対して故国の己に酬いたところとを考えるなら、いかに無情な批判者といえども、なお、その「やむを得なかった」ことを認めるだろうとは信じていた。ところが、ここに一人の男があって、いかに「やむを得ない」と思われる事情を前にしても、断じて、自らにそれは「やむを得ぬのだ」という考えかたを許そうとしないのである。
 飢餓も寒苦も孤独の苦しみも、祖国の冷淡も、己の苦節がついに何人にも知られないだろうというほとんど確定的な事実も、この男にとって、平生の節義を改めなければならぬほどのやむを得ぬ事情ではないのだ。
 蘇武の存在は彼にとって、崇高な訓誡でもあり、いらだたしい悪夢でもあった。ときどき彼は人を遣わして蘇武の安否を問わせ、食品、牛羊、絨氈を贈った。蘇武をみたい気持と避けたい気持とが彼の中で常に闘っていた。

そうです。李陵の降伏は本当に「やむを得ない」と読者に思わせるのに十分な境遇からくるものでした。
そんな境遇なのに、それをも超える苦境に立っても折れない蘇武の存在。
蘇武への李陵の気持ちに、すごく共感を呼び起こされました。

蘇武酷い!蘇武なんて居なければ!と言えれば簡単でしたけど…
もうこの煩悶さはまた司馬遷のそれと根底は似ている部分がある気がします。
気持ちのハケどころが見当たらない。

そんな祖国に伝わらぬ忠信を貫き僻地で孤独に死ぬかと思われた蘇武が、何の因果か帰国を果たすことが出来たわけです。
蘇武大号泣。

そんな蘇武を見て李陵は…

李陵の心はさすがに動揺した。ふたたび漢に戻れようと戻れまいと蘇武の偉大さに変わりはなく、したがって陵の心の笞たるに変わりはないに違いないが、しかし、天はやっぱり見ていたのだという考えが李陵をいたく打った。見ていないようでいて、やっぱり天は見ている。彼は粛然として懼れた。今でも、己の過去をけっして非なりとは思わないけれども、なおここに蘇武という男があって、無理ではなかったはずの己の過去をも恥ずかしく思わせることを堂々とやってのけ、しかも、その跡が今や天下に顕彰されることになったという事実は、なんとしても李陵にはこたえた。胸をかきむしられるような女々しい己の気持が羨望ではないかと、李陵は極度に惧れた。

李陵にさしたる瑕疵があるわけでもないのに、うおおおおおと言う気分に。
筆舌しがたいので引用するしかあるまいでした。


複雑な気持ちになって面白い。

こう、中島敦の小説は、主人公は高潔じゃないですけど志はあるもののちょっとだけ折れる感じがします。
山月記はプライドが高かったものの一旦筆を置くほどには妻子を考えていましたし、虎に成り果てた後の対話からもなんだか物悲しい振り返りがありましたが、詩業に打ち込む心はままあったわけで。
名人伝の紀昌は師匠の変な修行をマジメに取り組むなるほど志がある男でしたが、魔が差し文字通り師に弓引いてしまいます。
それでも紀昌は弓に真摯だったわけで。
沙悟浄も一見哲学者に見えて俗っぽい部分があるキャラクターです。

李陵も悪人ではなく、全うな理由とはいえ志を違え、またそれ自体を恥じ入ることも出来る人間です。
ただ、蘇武が居なければそこまで居心地悪い気分になる内省はしないかな?って感じの人間にみえました。

そういった多面性というか、一本道を歩こうとして絶妙に躓く主人公たちが中島小説の魅力なのかなあと思ったりします。

白鳥士郎 りゅうおうのおしごと! 05 感想

いやーいい最終回でしたね!
これにてりゅうおうのおしごと!完結です!


マイナビ本戦と竜王防衛戦で迄360ページ。おもわず「たっぷり!」と掛け声を出してしまうボリュームでした。


ハワイ

天衣ちゃん羽生られて可哀想なんですけど!!
「一門」の中に終ぞ含まれないのが微妙な立ち位置すぎて…そういえば一門歓迎会もうやむやでしたっけ?

ハワイということで何度かダイヤモンドヘッドの単語が出て、目次にもダイヤモンドとあったのでまさかダイヤモンド美濃でもだすの?
っと予想しましたが、見事に外れました。デスヨネー。

清滝Pは新田さんか…。新田さんが段級位資格取得するコラボくるです?

とまあ楽しく過ごしていました。
特に会長の出番が増えて硬軟併せ持つキャラがよく出ていて好きです。

姉弟子もですね…今回は水着パーカーという武器でしたね…単語単位で喋るのがグッとキますね…前回まではまだ負け戦ムードでしたが、もしかして本当にレースに勝つのでは?と思い始めました。

将棋のほうは、今回もよく分からないのですがあっさり負けました。
初戦ぐらい勝つと思ってたんすけどねー。逆に初日の観光テンションからの落差が辛い。

第二局

天衣ちゃん可哀想なんですけど!!
本当、相手しなさすぎていておじいさんから「末永く」とお願いされますけれどそれ幸せなの…?
たぶん会いにこなかったのも八一のためを思ってなんでしょうね…

第三局

ここまで対局がわろしわろしで三連敗。
もっと善戦させると思っていたのですが、思っていたよりも作者は落としてきましたね…。
今までは内容はともかくその才能は様々な人から認められてきたので、熱い接戦を描くかという予想は大きく外されました。
そしてさらに八一はどん底に落ちていきます。
この展開から気持ち的にも挽回方法ないのでは?と結構ハラハラしました。
あいとも別れることになるんですけど…マイナビ本戦にも付き添わないことになってしまって…
盤外で拒絶される天衣お嬢様可哀想なんですけど!!

あとさらっと姉弟子の防衛流されてました。竜王戦と被るのかあ。

マイナビ本戦

八一不在なのにあいちゃん気にかける天衣お嬢様お優しい!!

そんなあいは月夜見坂に負けるんですが、これもメンタル面の影響が大きかったってフォローですか?
まだまだ強さの上限が見えないんですよねー。
八一にはあっさり負けますけど、好調なら対月夜見坂戦はまた違った形になってたのかなあと。
そんな月夜見坂側からもまた八一の才能を認められる部分が出ます。
忘れがちですけど、すでに誰もが認める実力者なんですよね。なのに凹みすぎなのか、だからか。
自分を卑下しすぎると他の棋士の立つ瀬もないですね。本人にはまったく関係ないのですが。

で、さらに天衣ちゃんは予選に続き八一のためにがんばっているんですが…
彼女の口から銀子に対しても「同門」という言葉が出るのが泣けます…
女流棋士申請すらあいに譲るもん…そんなんできひんやん普通…
同時に勝って順番譲るならまだしもあいちゃん負けてますからね…

天衣お嬢様、盛大に報われて欲しい!そう思ってました…まだ…

対釈迦堂さん編

7四に打つか9四に打つかで勝敗がガラっと代わって、かつ八一はそれを見抜いていて、タイトルホルダーの釈迦堂さんがミスをするっていう状況。なんですが、毎度のことなんですけれどリアリティがあるのかよくわからないです。
釈迦堂さんがこの対局を大切にしている理由も不明ですし。
全局全力なら毎局リゼのストレートにならなイカ

とはいえ。釈迦堂さんにの「大切さ」は彼女に対してではなく桂香さんへのものだということは投了からわかりましたけれどね。
登場二回目とは思えない良い先駆者ポジションですね。

残りのモヤモヤもインタビューでチャラでした。
そうかー桂香さんがキーパーソンかーとこれも意表を衝かれて、終始作者に翻弄されている楽しさがありました。

それはそれとしてお世話するゴッドコルドレンはよい。心が中二になる。


で、それから八一は強い衝動で皆に会いたがるのですが…

桂香さんだけじゃない
俺の部屋を訪ねてきて、俺の力になりたいと言ってくれた姉弟子。
そして誰よりも健気に俺のことを思ってくれていた、あい。
今すぐ会いたかった。
会って謝りたかった。

あのっ!天衣お嬢様は!!!???
いや、そりゃ、顔は出さなかったですけれども、そーいう形の「支え」なわけで。
清滝師匠が挙がらないのは良いとしても弟子を持つ師匠としてこれはどうなのですか。

天衣お嬢様可哀想!!

第四局

はい、もう清滝一門として当然のごとくお嬢様は含まれてませんのですが、
大盤解説ということで山刀伐&鹿路庭コンビが登場しました。
鹿路庭さん前巻で好きになったので登場はうれしく、掛け合いも面白かったです。
山刀伐さんの同性愛ネタはロリコンネタぐらい苦手なので、彼もこういった方面で魅力を出してもらえるとうれしいですね。

あとやっぱり会長がノリノリなのも好きなので、前夜祭はハワイより好みでした。

で、もうここまできたら無理やりなんでも天衣と絡めるんですが、あいのお母さんとのやり取りで「末永く二人で」というお願いが出るんですよね。
それへの反応自体は書かれていないんですけれど、これ第二局で天衣のおじいさんが言ったセリフとほぼ一緒なんですよねー…セリフまでの展開格差がおかわいそう。

名人戦

ということで、後は熱く突っ走るだけでした。読む側も一気読み!
想像の中で一応天衣も出てきた!(しつこい)
しかもエンジンかかり出してから100ページほど残してましたからね。
対局の熱気、周囲の熱気までも伝わる名勝負でした。

終局直後の名人のインタビューに対する「大駒一枚強くなれた」は「心の角道開けていこうぜ」に続く名言ですね。

ただ、このセリフは今調べたらよくある言い回しのようですね。
ひふみんは握手するだけでもと言われております。

加藤一二三の魅力 − 証言

そしてラストシーンはあざと過ぎるほどのあざとさ。
もう言うことないんじゃないですか?

観戦記&感想戦

まさかこの作品で叙述トリック?食らうとは思ってもいませんでした。
私はてきとーに鶫(つぐみ)と読んでいましたが…アニメではどうなっているんでしょう。
名人も徹底して描写を減らされていて、それが最終局面での効果的な演出に繋がりました。(まあ名人は羽生さん重ねればだいたいよさそうでしたが)
なので、感想戦を含めて思いもよらず「小説を読んだなあ!」と良い読了感に包まれました。
ストーリーやキャラではなく、ある意味盤外戦術な小説という部分に完敗した気分です。

しかしずるい…作者ずるいよ…


と、いうことで名作5つ星。
天衣の扱いや女性陣との棋力差等小骨はあるものの、熱量で押し流したかのような。
続きが読みたくなくなる珠玉の出来でした。

…でもねー!やっぱり天衣の扱いは許せんでしたからねー!登場巻からほぼひたすら放任で報いてなかったですからね!続巻でもうちょっとフォローして欲しいですよね!
それを期待して読みますよ!
今までは既刊の表紙飾ってなかったので不安でしたけれど!最近でた9巻が二人のツーショットなので!
少なくとも!9巻までは!

白鳥士郎 りゅうおうのおしごと! 04 感想

イカちゃんかわいいげそ?
イラストはメガネバージョンのほうが好きでした。

てなわけでマイナビ女子オープン戦デス。
女流大会なので今回も新キャラがいろいろ出てきて、姉弟子ががんばったりと華やかでしたね。
男性棋士の渋い感じも好きなのですが、今回はほぼお休み。

祭神雷

途中ヒカルの碁の単語が出ましたしネット将棋つながりということでそこらあたりをサイの字にかけたんでしょうか?神の一手で神の字までも??そこからなんでイカ娘!?なんてね。

ですが、祭神雷。今までの女流タイトルホルダーは全員結構好きでしたけど、このキャラはあんまりピンと来なかったですねー。
ぼんやりしてます。予測不能なキャラだとは理解してますが。
彼女の望みが八一と将棋(しつづけることが)できたら(強くなれるから)いい。
なんですけど、じゃあ超自己中心的な彼女がそれへ向けて最短距離で八一へ迫っているわけでもなく、名人含め他の人に迫ったりせずに理事会の言いつけ聞いて接触を控えたりこうやって女流で指しているのはなんなんだろうね?と不思議に思ったり。
究極のエゴイズムと称されていますが、行動はさほどでもないのでは?
っと気になっているのかもしれません。

なので、対戦相手としてもちょっと燃えなかった、かな。
芯を外しているので盤外戦術のセリフもろもろが小悪党の域を抜け切れなかったです。
ここまで来るとあの対局は狙って書かれたものな気もしますけれど。
あい相手なのも空振り感があったのかもしれません。あいちゃんメンタル強過ぎです。

鹿路庭珠代

わかりやすく裏がある、まっすぐなキャラで好きです。
あ、そうか。もともとそういうキャラが好きで、イカちゃんがふらふらしてるから微妙なのかなって書いてて思ったり。
うっかりすると小粒なかませ犬で終わりそうでしたが、次巻での活躍含めて昇るための努力をしているというのはとてもよかった。

あれですかね、ごくたまに見る野球などの実況で元プロが下手な解説しているとムズムズしてしまうフラストレーション?に対して業界を見据えて司会業にも研鑽を積んでいる姿がよい。
「将棋さえ強ければ」というのは是だったり非だったりで、今回の祭神雷には釈迦堂さんが非と言っております。
とはいえ強くなければ…という部分で両輪に全力を出していると明言されたキャラだから。といったところですか。

そういった部分を間を空けて書かれているので、いろいろ美味しかったな。

ビジュアルはもっと厳しい顔がよかったです。逆に言えばここから崩す余地があります。デスノートのキラのような顔の落差が描かれると個人的にうれしいです。(小畑さん関連になってしまった)

(ものすごくもったいないのですが、一番いいシーンであるはずの「けどね? 私、辞めないよ」のシーンでハッシーの物まねが浮かんでしまって…単語の構成がピッタリなのが悪い!)

桂香さん

時期が空きましたが、たしか前巻でも苦言を放ったような…
今でも桂香さんはプロの道を絶たれてほしいと思っています。
でも、まあ、上手くどん底から成功する道もまあまあ許せる(何様)とも思っていたのです。
ですけれど!前回あんなに苦悩した道が途切れるという部分を、今回はぽっと出の香酔千というキャラにおっかぶせてしまいました。
「棋界には取り返しが付かない厳しい現実がある。だけどそれはそれとしてメインキャラクターにはその道を歩ませないよ」
っという風に読めてしまって、スケープゴートですよねえ。
代わりに桂香さんには仲間に止めを刺すという苦行が科されたわけですけれど、読者が思い入れの無い初登場キャラクターを代わりに引退させるのならば安いものですよね。

サブキャラクターは物語の世界を広めますし、棋界の様々な面を描けると思います。
メインキャラクターが出来ないこと。すごいこと悪いこともさせられます。
だけどメインキャラクターにさせたくないことを代わりにさせちゃ微妙かなあ。と。

というのは桂香さんが弱く負け続けるストーリーが見たいというただの一読者の願望なので、なので…
そう受け取ったとしか言いようが無いだけですね。

地の文で活躍が約束されたので、以後は才能開花ルートを楽しみます。

釈迦堂里奈

えーっと、まあ歩夢くんが好きなので女性版ということでよいです。
足が悪い、というキャラ付けはすごく便利だということを、平行して読んでいる彩雲国物語の鄭悠舜ともども感じます。関係ないですね。
本人だけではなく回りの人の描写を引き出したり飲み込ませる何かがあるというのはよいです。
将棋特有、でもないですけれど、正座との関係性があってよりよいですね。

っとよいよいよーいのキャラなのですが、タイトル保持期間だけでも20年近くということで、比較的高齢なのです。
一方ビジュアルは若いので、読んでいる最中に脳内でおばあさんになったり20後半ぐらいになったり、ハウルのソフィー現象に一人苦しみました。
歩夢くんとの絡みの美しさを際立たせるならもっと老けている方が私好み…

ゴッドコルドレン

彼とは関係ないですが、彼と八一の研究会シーンは、ああいうのはあまり好きではありませんでした。
実話を元にしたのかはわかりませんが、少しファンタジー度合いが私には過ぎたかな?

これも関係ないですが、名人の悪手シーンもちょっと説得力に欠けるかなーって。

彼は好きですしポテンシャル高いと思うのですが、将棋シーンで完全に活かしきれていない気が。
今回はそこを師匠との絡みで補えたのはよかったなあ。というのは銀子にも同じことが言えます。

銀子

だんだんと将棋以外は最高のキャラになっているような…
いいぞもっとやれ!由緒正しい?ツンデレだ!
などと供述しており拍手喝采しているもようです。
ちゃんとデレた後に肉体攻撃ありの怒りシーンがあるのが王道ですね!
ある意味八一がまっとうにどきどきできる相手なので、そこらへん含めて応援していますよ!
今回は衣装でしたが、今後無理やり引っ付けるイベントアイテムがあれやこれや出てくる展開も吝かではないです。
今まで将棋の部分でいろいろ不安定でしたが、今回でひとまずかわいいの大黒柱を打ち立てられたかと。
どうもあいへの意地悪と男女棋界の違いの橋渡し的役割が多かったので。
タイトル戦まで描かれれば将棋部分の魅力も出せるかな?

感想戦

棋士のお金てぇのは難しいものがある気がします。
高校生前後の一般的男主人公がたかられまくる展開もうーん…ですし、
狼と香辛料でロレンスがわりと散財していたのもうーん…でしたし。

その点棋士の主人公となると畢竟才能もあり対局もたくさん勝つので資金は潤沢です。
3月のライオンでもがっぽり稼いでますが、庶民的な暮らしだったりイジメのときは金に任せそうになったりしてました。
感想戦で懐事情がちょいと垣間見えましたが、じゃあポンと出してあげれば?と怨嗟の声が出ました。
しかしじゃあと高級マンションに住んで良い服着ておいしいものを食べていれば(お話として)いいわけでもないので、塩梅が難しいですよね。
お金のにおいはさせず、かといって面白くなる部分でお金を惜しまない(食事や移動手段や友人同伴)ことにしておけばいいので都合はとても良いんですけれどね。

結論、金を誇らず金に悩まず行動に対して大盤振る舞いしてくれていれば良いと思います。
現代もので若い主人公かつお金持ち、というのは貴重なので、どんどんステーキやきゃにを食べればいいんじゃないでしょうか。

でも着物を惜しむ姿はくずいぞ八一!


(真面目な部分の)解説部分と鹿路庭さんがよかったです。
将棋って将棋を知らない人でも楽しめるように解説やおやつタイムを押し出している印象がありますが、今回も解説のやりとり部分がよかったのです。

あいと天衣は今回も終始安定していて、特筆しづらいのですが、ちゃんと可愛いので。
まだまだ才能で押し通す二人の今後も気になりますね。

次巻はマイナビ竜王戦にと転機になる巻で期待です。

森見登美彦 ペンギン・ハイウェイ 感想

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

セーフ!!
来週映画公開かと思っていたら今週でした!!

はい。
二度目です。

最初はーもう6・7年前かな?
いや単行本で読んだから8年前?

当時はまさかまさか、あの腐れ大学生に年をとらせたような登美彦氏からこんなジュブナイル小説が飛び出るなんて!!!!!
っと驚くとともに、しっかり氏のエッセンスが濃密に行き届いていて。オモチロイ。
一気に登美彦氏の作品の中で一番好きな作品になったのでした。

で、本当に好きな作品特有の現象として大事に封印してきたのですが…
このたび映画化ということで、感想の嵐にさらされる前に、今一度新鮮な気持ちのうちに読み直そうとあいなりました。

氏は氏の作品を子供として扱ってますが、まさに子供のアオヤマくんが主人公の今作。
とにもかくにも彼が大好きなのです。

アオヤマくんはかしこい。しかも私が好きなかしこさだ。
子供がかしこい・天才というと、江戸川さんちのコナンくんみたいなのを想像しちゃいますが、
「子供なのに大人のように考える」子供はあまり好きではありません。
アオヤマくんは「彼が彼自身の努力によって得られる知識と想像力で物事をよく考える」のです。
子供らしいかしこさ。
あああああ
こんな説明じゃ1%も伝わらないのでもどかしい。
アオヤマくんは知らないことを知っているし、想像で補うことができるうえに想像であるということをことわれるし。
うううううううう
そして何よりおっぱいなんです。
いかん、言語化できない。
アオヤマくんの客観視っぷりはすさまじくて、でもそれはアオヤマくんが天才だからじゃなくて、
アオヤマくんのお父さんに習ってノートをちゃんととったりする積み重ねがあるからで、
一方でおおらかなお母さんの愛もあって、
ただ勉強できるだけじゃなくて、相手の側に立って考えてみることもできるし、相手を尊重できるし、
どんなにそのときの気持ちをノートに書いても、読み返したときに本当に同じ気持ちにはなれないと知ったし…
おっぱいが好きだしお姉さんが好きだし夜更かしはできないし…

いったい何を言えば良いんだ!読書ノートでも取っておけばよかった!

そんな、とにかく、純真すぎるぐらい純真でかしこいアオヤマくんなんですが、それでもこれは登美彦氏なんだなあと感じるんです。
登美彦氏のなんだか純真な部分がぽんと飛び出たような。
氏の子供の頃では決して無いけれど、氏の子供の部分、みたいな?
現実味があるリアルな子供描写ではないんですけど、何か懐かしいような、読んでいるとぽわぽわぴゅあぴゅあな気持ちになるのです。

そして対になるようにアオヤマくんのお父さんがいてですね。
彼はアオヤマくんに考え方を教えるんですよね。夜にはカフェに迎えにいったり、二人でドライブしたりもします。
お父さんは直接答えを出そうとはしないし、アオヤマくんもまた直接質問はしません。
二人は考える。考える。
そんな、アオヤマくんが行き詰ったときにちょっとだけ手助けをしたり、いい刺激を与え続けるお父さんは、
彼があってアオヤマくんがあるんだなと思わせるようなかっこいい人なのです。
あとこれは勝手な妄想なんですが、彼を映像化するときは顔(とくに目)を写さない感じが似合うと思っています。
脳内映像も常に影が射すか鼻下までのカメラワークでした。アオヤマくんが子供だから自然と脳内視点も低くなっているのも影響かな?
それ町」の嵐山夫妻的なアレでどうでしょうか?
(このイメージも映像化見たくない理由だったり)
えーっと…それで、彼もまた、登美彦氏です。
登美彦氏の大人な部分だと思っています。放任、というと言葉が悪いですか。
見守りのその目線が、登美彦氏が自分の作品を語っているときのような温かみあふれ満ち溢れるものなのです。愛だよ愛。

「私は平気ですけど。お父さん、心配になることありません?」
「もちろんいつも心配していますよ。しかし、もうそんなことはあたりまえになってしまって、心配らしい心配とも言えないな。そういえば、息子は今、手強い問題をかかえているそうです」
「知ってます」
「でも、世界には解決しないほうがいい問題もある」
「そうかしら?」
「もし息子が取り組んでいるのがそういう問題であったら、息子はたいへん傷つくことになる。私が心配するのはそれだけですよ」

あーかっこいい。そう、ここだけじゃなくお姉さんとの何気ない会話も良いんですよね。
「父」だけじゃなくて「大人」としての部分を引き出す意味でお姉さんはすごい。
そんな影に支える父も、肝心なときに家を空けてしまいます。
ああこの心細さなんて!!

アオヤマくんとお父さんのロードムービー小説とか書かないかなあ!

(このちょっとかしこいこどもと優しい尊重してくれる大人たちという構図は「ぼくのなつやすみ」的であり、こっちも大好きです)


はい、えー、なんだ。
まだアオヤマくん周辺書いてない。
アオヤマくんは非常にかしこい小学生ですが、周りもちゃんとかしこい。
ウチダくんも、ちょっと控えめだけどちゃんとかしこい。ブラックホールや死など、不安と戦っているになるようなものを見つめ研究している姿にはアオヤマくんより共感しやすいかもね。恥ずかしくてノート隠すところとか。
そして、なによりもですよ?
おっぱいのことを考え公言してしまうアオヤマくんを諭すことができるのです!!かしこい!!
プロジェクト・アマゾンは<海>研究より好きだったりします。

ハマモトさんもかしこいですよね。
チェス少女!から<海>の綿密な研究と、アオヤマくんの良い好敵手です。大好き!
彼女は3人の中では一番子供、な部分?を使うというか出てくるキャラですね。
お父さんのことを話したり、怒られたり、スズキ君に対する態度だったり。お姉さんを疑ったり。
女性だから、じゃないアオヤマくんとは違う一面があって、好きです。

スズキ君帝国皇帝もですね、最後に見せ場がありましたね。
嫌に見える人間であっても、人は一面だけではなくいろんな面がある。
そんな風に言及されていたのは四畳半の城ヶ崎先輩でしたっけ。
金閣銀閣もそうですね。スズキくんはこっちよりかな?

ただし、おしっこかけるのはやりすぎだゾ。


はい。
ストーリーの雰囲気について。
夏休み独特の熱気と気持ちよさに満ちているんですが、ところどころで不安、であったり恐怖、であったり、そういう雰囲気が流れて、ちょっとだけホラーっぽいです。
ジャバウォックは不気味だし、お姉さんの不調は本当に不安で悲しいんです…
再読だから結末は知ってるのに、やっぱり何かチクチクと胸が刺されるのです。

 そのころ、街にふしぎな噂が流れているのを母が教えてくれた。郵便ポストや自動販売機が消えてしまった話。バス通りにならんでいる街灯のランプがいつの間にか消えていたという話。ほかにも、図鑑にのっていない大きな鳥が高圧鉄塔に何羽もとまっていたという話もあったし、夕暮れに給水塔の上で猿みたいなケモノがおどっているような影を見たという話もあった。夜、白っぽい魚のようなトカゲのようなへんな生き物が集会所の前の路上を歩いているのを見たという話もあった。

ここの猿のくだりが本当に怖くて嫌です…
遠野物語やしっぺい太郎など、猿の話はかなり苦手です…
踊りといえばぬ~べ~のしょうけらも怖かった。

「どうしたんだろう、私」
 お姉さんがつぶやいた。両手で顔をおおうようにした。
「へんなことばっかり。真夜中になると、私の家から生き物が森へ出ていく。ぬれていて、ぺたぺた四つん這いになって歩くの。気味の悪いやつよ」
「ジャバウォック?」
「わからない。いつも私は眠ってるから。出ていった気配だけわかるの」

いやー怖い。私に出来るのはがんばってお姉さんを励ますんだ!とアオヤマくんを応援することだけです。


チカレタ。
最後にラストとその後。
ラストはもうしゃーない。です。のです。
受け入れるしかないのですが、でもあんな形で迎えれたのはよかったのです。

でもですね?
このお話でアオヤマくんは何が出来たんだろうと考えました。

アオヤマくんはなしえました。
いろいろな研究を平行で進めて、完成したり解き明かしたり途上だったりします。

アオヤマくんは守りました。
お姉さんとの解明や海辺の街へ行く(はまあややとしておきましょう)約束。
ヤマモトさんとの研究の秘密の約束。
自分自身との約束も。彼は怒らないと決めたので怒りませんでした。ちょっとだけ泣いちゃったけどね。

アオヤマくんは成長しました。
大人になるまで三千八百八十一日から三千と七百四十八日まで。日々アオヤマくんは成長しました。

でも、でも。他にいったい何をすればあの結末は回避できたんだろうか?と考えてしまいます。
アオヤマくんが研究した結果のあれが最善だったとは思いたく、というか。
アオヤマくんは前を向いているのに一人だけ勝手に後ろを向いてしまいます。

アオヤマくんは最後、きっとすごいエネルギーを得ました。ペンギン・エネルギーなんてめじゃないものを。
私もさびしいけれど、それでいいじゃないかと受け入れるようがんばるのです。


なーんてお話はアオヤマくんがお姉さんが好きなまま終わります。が!
アオヤマくんは普通に結婚して欲しいなー。とも思います。ハマモトさんならなお良いけどね!
お姉さんへの気持ちは変わらずとも、それでも愛され受け入れお父さんになるアオヤマくんが見たくあります。
そしてアオヤマくんがあの時のアオヤマくんのお父さんぐらいになったとき、アオヤマくんの息子があの時のアオヤマくんの年頃になったとき。
あのときのままのお姉さんと再会して。
どれだけえらくなったか見当もつかないぐらいすっかり大人になったアオヤマくんだけれど、二人の会話を小説文として表現すると、あの時の日常の一場面をそのまま切り取ったかのようなものになるんじゃないかな。
なんて想像するのです。


ということで、圧倒的五つ星。個人的殿堂入り作品は二度目もたいそうオモチロかった。
この作品は「ぼく」「おっぱい」「ぐんない」で構成されています。とても良い本です。
小説でもアニメでもいいので、大勢に広まるといいなあと思います。

ではでは。ぐんない。

佐藤大輔 皇国の守護者 09 皇旗はためくもとで 感想

はぁ~…
あのさぁ…

蓮乃さんの新城への支離滅裂な言動や振る舞いも、保胤への一種の裏切りでもある新城へのお気持ちも。
全部ひっくるめて彼女の出来た人の良さが何とか手綱をぎゅっと握ってつなぎとめて彼女を良人せしめていたわけですよ。
つまりは自制できていたってところが重要なんですが、開幕あの始末ですよ。
最大の矛盾にして問題点ですよね。
新城は…まあ…自分を騙し通したと見ればまだなんとかですが、蓮乃はすべて諒解済みですからね。
一気に好感度が地の果てにまで堕ちて最期も悲しむ気持ちが一切わきませんでしたよ。
再読となると覚悟は出来ていたんですが、忘れていたということも相まって一度の誤りというわけでもないところが最高にBAD。
ストーリー上の役割としては重要な彼女ではありました。
彼女と新城の出会いが物語の大きな転機で、別れもまた大きな転機になりえたんでしょうね。たぶん。

思えば男くさいこの話も、女性はなかなかにターニングポイントでした。
まず蓮乃がそうであるし。しみじみ一巻冒頭を開くと麗子もそうなったのでしょう。
佐脇くんの致命傷は婚約者でしたし。
草浪道鉦の心の楔は長康でありましたが、逆鱗は妻の明野でした。
守原が明野の扱いを誤らなければ、少なくともあのような最後の行動には走らなそうな人物でした。
そもそもここまでの苦境に立ったのはユーリアですし、ユーリアの女性性は帝国でも人々を動かしてきました。

両性具有者も作中ではほぼ女性として書かれていましたし、
彼らは女性の絶対的な忠誠面を書きたかったのかしらん?
よく出る蓮乃もユーリアも皇国一般的な女性の振る舞いではなかったでしょうし。
単純に戦場に女性を持ち込む。だとか、将官の尻を女に掘らせたかっただけのような気もしますが。

とかく、主人公として英雄色を好ませようという読者サービスな面もありましたが、なかなかどうして語るに女性が外せない作品ではありました。
そうそう、千早も女性です。一番母性母性していました。

さて、内乱は。
空挺!後方装填式!と、溜まったフラストレーションを発散させてくれる程度にはスカッでした。
敵が短銃・鋭剣の将校たちというのはやや相手に不足ですが、そこは逆転を狙った近衛奇襲なのでヨシ。
新城の最終パーティーは同期生+個人副官+帝国将校+帝国皇族+龍族というヘンテコなものになりました。
この感じ、ハガレンの最終決戦を思い出しますね。あっちよりかはすごい豪華なメンバーですけど。これで近衛だというのだから諧謔の笑みのひとつも失笑してしまいます。

しかし、同期生。
この巻が始まりではないですが、彼らは全員が戦争を愉しんでいるのですよねえ。
新城自体は戦争を手段として扱う男だと思っているのですが、彼が信を置いている(しかも現役を離れていた!)彼らのこの愉悦のことをどう思っているのか。
これはかなり気になる部分でした。
単純に見ると新城はそれを唾棄すべきものとして扱うような気もするのですが…
内心はどうあれ良い将校としてふるまっていればOKそうかも。
なにしろ新城自体が内心は小心ここに極まれる自嘲自罰の人なので…。
許しはしそう。でも好むのかは謎です。
壮大なプロローグが終わり、ガーダーとしての活動が増えればそこらへんも描写されたのでしょうか…


ということで本作は終わりなのですが。
はい、壮大なプロローグでした。

湾岸戦から内乱まで、正直北領戦の出来を超えないんですよね。
全編面白くて、こうやって再読でも楽しんで読み終えることはできたのですけれど。
北領撤退戦が完璧すぎた。
漫画版が続いて欲しかったという話はちょいちょい見ますが、あそこで終わった良かったのかもと読み終わるたびに思います。
私も漫画版から入りましたが、原作を読み進めるとだんだんと既存キャラであっても伊藤さんのキャラデザが抜けていくんですよねー。(猪口除く)
だから、漫画版はあれでひとつの正解だったと思います。

原作については続いて欲しかった!!
剣牙虎!導術による優越!翼竜運用の発展!もっと見たかった…。
戦記ものは全然読まないのですが、今のところ一番好きなのです。
似たような作品が知りたい。
常にままならなさを描き、大勢も常に負けているものの面白いこの作品は貴重なんじゃないかなあと思います。
北領戦を超えられないといいながら、読み出すとまた最後まで読んでしまうような気がしていますし。

未完だけれど、許せる面白さがこの作品にはあるのです。