かのくらかの

かのくらかのが送るかのくらかの。と言われたい。娯楽感想日記。

ネタバレを含みます。

ジェイムズ・ティプトリー・Jr. 短編集 たったひとつの冴えたやりかた 感想

面白い!!
こういう本にたまに当たれるからSFは好き。
超有名作?に恥じない面白さでした。

パロディ・日常使いの取り回しのよい言葉という意味で「たったひとつの冴えたやりかた」を言葉として知っていたんですが、
名前勝ちにならない内容の良さでしたね。やりかたも思ってたんとちがう。かったですし。

物語は、人類の活動圏の辺境。星々がぐっと減る「逆天の川」のような「リフト」を舞台にした短編3つ。
タイトルは原題のThe Starry Riftのほうがまとまってて好き。

たったひとつの冴えたやりかた

少女の冒険劇から、地球外生命体との友情を描いた作品。
正直、最初にコーティーが宇宙に出てイーアと出会うまでは結構退屈でした。
人類が宇宙に進出した時代の説明や、宇宙航海方法みたいなものを説明するかのような出発・家出シーンですね。
振り返ればそこのおかげで後の物語が読み込みやすくなっているんですが、チャート組んだりするところは脱落しかけました。

シロベーンが出てからは、本当にファーストコンタクトモノ、純真な友情冒険活劇としてとても面白かったです。
寄生型の定めとしてシロベーンがいつ裏切るか終盤まで内心ハラハラしながら読んでいたのですが…
まさかあんな結末になるとは…
コーティーの真の勇気と、シロベーンの理性、二人の友情に胸が痛みます。
たったひとつの冴えたやりかた。誰や何にとって、といったものが欠落したタイトルは読む前より好きになりました。

ちなみにドロンはcyriakの猫のようなものをイメージしました。

あとこれを言うと台無しですが…寄生獣

グッドナイト、スイートハーツ

若い活力を感じた一本目から大きく転じた作品に、著者の手広さ?何でも書けそうな力量、多彩さを垣間見ました。

すごい詰め込んでますねー。
一匹狼の男がイナセに自由に生きている風体で始まり、
過去の恋人との再会。ただしコールドスリープの影響で彼女のみ年をとるものの、美容整形で形は保ってはいる。
そしてさらにそこに彼女のクローンが…。
思い出を持つ歪な彼女と当時の面影を持つクローンの彼女とで気持ちが揺れ動くメロドラマっぽい展開から二者択一の選択へ…
を見事な機転で切り抜けると、今度は独りの自由や歴史的発見と彼女たちと共にある人生かという悩みへ…。
そこでさらに選択が起こるのか!
自由と女、両方の幸福でゆれる男が悩ましい。自分ならどっちを取るかな?難しい…

SFだから起こるコールドスリープによる人々との年齢差やクローン、燃料・航路など、男女の話にとどまらないSFとして面白かったのです。

あと印象的なのが、「老い」を気にしない彼女ですね。
作中の、あるいはそれまでの彼女の気持ちは推し量りきれませんが、作中で彼女は年齢を理由に僻んだり拗ねることはほとんど無いですし、
むしろ若いクローンを生かすよう男に迫りすらします。
あの世界では実はたいした問題ではない年齢なのかもしれませんが…

これはあとがきを読んでからの印象ですが、老いへの作者の何かがにじみ出ているような、あとから印象アップしたキャラクターでした。

衝突

ファーストコンタクトモノだヤッター!
お互いがカタコトでしゃべる展開は好きなので、それだけで面白かったです。
邂逅までのお互いの種族の話が交互に展開されるのも、どうなるのかという期待が煽られてよかったです。
交渉自体は上手く運ばないのですが…全員の懸命な事態のなかで威厳を剥ぎ取られた単語コミュニケーションが進行するのは良いです。

あと、たったひとつの冴えたやりかたでも思ったのですが、メッセージパイプによる事後の記録を聞く。聞くことしかできない。というシチュエーションがわりと好きでした。

あとがき

作者の年齢や性別や出来事や。
これだけでなんか掌編のような衝撃的内容でした。
ある意味遺作ということは…これを書いたときの年齢は…
すごいですねえ。。


翻訳独自のぎっしり感、サイエンス的な解説のもっさり感はやはりあるものの、文体は比較的読みやすいです。
話の内容も核の部分は分かりやすい、馴染みあるものなので難解といったものとは無縁でしょう。
SFの賞を取るほどの出来なのかはわからないのですが、賞を取ったからといってカタブツな作品ではないので、オススメです。
3編どれも面白かったのですが、手が伸びにくいならやっぱり「たったひとつの冴えたやりかた」だけ読むのでもいいかな?

上遠野浩平 ブギーポップは笑わない 感想

dengekibunko.jp

イリヤがwebで再連載され、スレイヤーズが再アニメ化し、ブギーポップも再アニメ化…
古い作品を読んでいるつもりが一週以上回ってトレンディ?な気分な異常状態ですね最近。

ブギーポップ。名前だけは聞きすぎる作品ですね。
ラノベ界のターニングポイントらしいですが、今まで手をつけていませんでした。
というのも上遠野浩平は昔に単巻の冥王と獣のダンスを読んで、相性が悪いかなー?と敬遠していました。

今回はそれを織り込み済みで読んだのですが…

結果からいうと、うーん…
何がウケて後世のラノベ界にどういう影響を及ぼしたのか、良く分からない作品でした。学園異能モノみたいな流れですか?
煽りではなくて!この作品、何が面白いんでしょうか?

読む巻間違えたかな?って感じるようなキャラクターが出来上がってる物語の途中に突然放り込まれる的なのはよろしいです。
各キャラクターの物語がそれぞれ同時進行で進むのもよいです。
ただ、最終章でそれぞれがかっちり繋がって嵌る快感のようなものがなかった。かな。

何が書きたかったのかが読み取れず、各キャラクターや要素の意図が読み取れず…


冥王と獣のダンスのときも思ったんですが、上遠野浩平の三人称は淡々としているといいますか。
三人称の中でも、特に視点が遠い・広角な印象を受けます。
だから、読めなくはないんですが、読者として起こっていることをただ眺めているだけ。みたいな気分になって。
私とあまり相性がよくない。

それで、ブギーポップはそれを補って余りある(と期待していた)ストーリーの魅力がなかったので、面白くありませんでした。
話は整理するとちゃんと物語になっているんですよ。
話もキャラクターもおおむね理解できると感じれるんですよ(世界の敵に関してはネタバレ見ないと勘違いしたままだったでしょうけど)。
作者の意図の本質的な理解じゃなくても主観的な納得という意味の理解で。

でも、まあ、面白くはないので。
続きを読むことはないですね。
作者切り、かな。

炎の魔女と口笛は好きでした。
残念。

シレン4+ メインストーリークリア

冒険17回目
レベル33
牙の剣+16
獣王の盾上+29
ちからの腕輪*2

復活の草一回使用

でクリア。
けっきょくマゼルンと出会わず異種合成はできなかった。
印は特別なものは掘り出し物(そのままの意)の会心ぐらい。
仲間も途中で全ロスト。
ラスボス戦は手持ちに混ざった闇ンドゥバでピンチになるも、逆に身代わりにできると気づいて割りと楽だった。
中ボスのほうが強い!

苦行のシレン3を乗り越え、やっと目的の4ですよ。
チュートリアルダンジョン長いなあイベント薄いなあと思いながらずっと進めてて、4が初代形式の作品だと最終盤まで気づきませんでした。2→アスカ世代なので。
しかしドット絵含めてテンポも良く、壷の中身が見えるUIも合わさってサクサクと進めて楽しい。
夜は盾に皮印入れちゃうと行き止まりで足踏みが定石になっちゃってテンポ悪いんですが。
攻撃回数8回縛りでどう立ち回るのが正解なんですか?

これが望んだ「継続ダンジョン」

シレン3はレベル継続の皮を被った細切れダンジョンでした。
求めていた「前回の冒険より深く潜れる楽しさ」が無かった。
対してシレン4は長めの強めメインダンジョンに、繰り返し挑戦のインセンティブが豊富にあるのが良い。
レベルとは別方面で冒険ごとに状況が良くなっていく。
持ち込み可ダンジョンなので鍛冶屋ループは当然ですが、
タグ付けでアイテムロストの可能性を抑えたり(引き上げの巻物合成をギタンで解決できるのが大きい)、NPCイベントはこなすごとに効果の上昇。
味方は初代風に初期ステが高いのですが、加えて上限は低いものの永続レベルアップ付き。
さらにさらに武器盾には個別に経験値を持っており強化される…。
いたせりつくせりですね。
「クリアが目的ではない攻略」時に、NPCや武器盾に経験値が入るので、道中の戦闘も無駄にならない感覚が非常によかったです。
久々に「楽しい作業」を行っている感覚。

クリア後ダンジョンも豊富で、まあ、ド下手なのでクリアできんのですが…いいんじゃないでしょうか。


ストーリーは無為に等しいものの、シレン3疲れの胃に優しい仕様でよろし。
難易度も高いものの、時間をかければクリアは出来るし、メインダンジョンだけでも素潜り等で楽しめそう。
NPCイベントもまだまだ終わってないのでもうしばらく楽しめそうな星4です。(シレン3の反動でちょっと甘め


遭難・海賊ハット・テンガロン銃使い・杖術使いって序盤イベントでサモンナイト3思い出しました。オカマは?

Hagex氏が死んでよかったかも

普段とは違うけど。
定期的に見ていたサイトの人の死亡報告ってめったに見るものじゃないし、
気持ち的に一過性のものだから日記として書いておくかという気分に。
いちおうはてなブログであるし。

低能先生

低能先生についてはほとんど知らないし、今回のHagex氏への感想には正直まったく絡まないのでさっと流す。
世間では殺人事件を犯すにいたった社会的なあれやこれやが深く議論されていたりしなかったりするが、
まったくもって個人的なメインテーマでなし。

低能先生は存在自体は他人の増田やブコメでちらほら見かけて存在は知っていた?
それが単一の個人を指すのかあるいは(転じて)ミームとしてある特徴の人々を指すのかはよくわからなかった。

観測範囲の違いからか、IDコールされたわけでもなし目に入らなかった。
だから、直接見かけたわけでもないのに第三者の言及のみで低能先生という存在は私の中に形付けられた。なんていうとかっこつけている。
うーん、ぬえ…的な?群盲象を評す…とも違うんですが。二次創作のみで原作を語る…知った気になる…のが近いのかな?

まあそんな人が居るんだ程度に。
変な人ぐらい広いネットには居るよね程度に。

だから実態?っぽいのを見れたのも

hagex.hatenadiary.jp

が初めてだったりした。
彼について言いたいことは特になし。

ハゲ子好悪

Hagex氏のブログは暇つぶしにたまに見ていた。
2chまとめ追放騒動もあって、おーぷんなどいろいろ転換期を迎えたりした後に、
比較的良質な(創作小話)キュレーターとして見てた。
たまーにMVも見たりしてたし、
通院や退会みたいなWeb日記も文章がおもちろくて好きだった。
むかーしLIGのブログが体感右肩下がりだったときの突撃?訪問とかもまあ代弁みたいで好きだった。(結局LIGは持ち直さなかった)

じゃあネットウォッチ活動まで好きだったかというと…
いや好んではいたのですが、ゲスいなと思ったりで褒めはできないって感じでした?
とくにはあちゅうやプロブロガーたちへのつっこみは…
良し悪し以前に、効かないジャブを打ち続けている印象でした。
それが彼らを諌める(というと絶対正義感がでますがそうも思ってないわけで)効果があるなら乱暴でもまあいいのかなと思ったかもしれないけれど、
いかんせん彼らの支持集団と属性が違い過ぎて、ネットでだけ盛り上がってるみたいな。
いやいや実際の効果のほどは知らないのですけど。
しかし普通に過ごしていたら絶対認識しない属性の人たちの存在とちょっとした話題をまとめて教えてくれるのは知見としてありがたかったし。

つまる所、諸手を挙げて賛同してはいないがそれはそれとしてエンタメとして消化していたと。
少なくとも義憤にのみ燃える人ではなくゲスい部分はあって、部分部分はそれとして人として褒めにくい人だなと思っていました。

ゲスい部分が無い人なんて居ないんだからそれはそれで正直な人だと好意を抱くよくわからん状態でもあったんですが。

当時の心境

25日にはてブを確認して、(非常に不謹慎ですが)ただの刺殺事件?がえらくブクマ数が伸びているなと思って、
ブコメを確認すると、なにやらHagex氏らしい。死亡確認らしい。
私はそれに対しては驚きはなく、「さもありなん」と思った。
「Hagex死んだのか。そりゃそうだよな」
と。

襲われて当然?

正直、Hagex氏は現実にはあまり何もしないであろうネット民に好かれ、現実になにかできそうな(権)力かお金か取り巻きがありそうな(あるいは逆にそれらがまったくない無敵の)人に嫌われる行為をしていたと思う。
なので、ここ最近、現実のセミナーを積極的に活動して宣伝している姿を見て、馬鹿だなあという気持ちと心配だなあという気持ちが全体の50%のうちの半々ぐらいの気持ちで眺めていた(大本の残り50%は後)。

ネットではある程度の匿名性があるのに、それを自分から捨てて、名前も日時も場所も公開する行動をするのは、
素人目から見て「トラブルを起こしてください」と言わんとするかのようだった。
同時に切込隊長がお元気なのでなにか安全なノウハウがあるのかな?とも思っていたが。

だから、相手が警察か異常者かヤクザか
行為が警告・脅迫か妨害か暴行か殺害かにしろ、何がしかのトラブルが起きてもおかしくないなと思っていた。
なのでネットで実際に事件が起きても驚かなかった。

しかしそれが今後の訂正も方針転換も出来ない死去という一番悪い形で訪れ、氏の文章・活動が見れなくなったこと。
この一点は悔やまれる。

嫌う前に去ったHagex氏

「その人が一番美しい時に、それ以上醜くなる前に殺す」
とはちょうどその日読んでいたブギーポップのセリフだ。
事件の少し前から、私は氏の活動に違和感を覚えていた。
もちろんセミナーの開催であるし、記事中のセミナーの宣伝であるし、セミナーのためかweb・日記カテゴリのにわかな活性化(というほどでもなかったがタイミング的にそう感じた)などだ。

とくにフミコフミオ氏との絡みはどちらのブログの記事もひどく好みではなかった…
もともとゲーム実況者などがコラボ実況する系がとてもつまらなく感じる質であり、今回もそれだった。(会って飲んだということを面白く仕立てるのは無理があるのでイチャモンの類)
(もしトークイベントが実現していたらヤバかった)

ただ、これらの変化は漠然と感じるのみで、
「もしかしたら好きでないスタンスに変わっていってしまうかも」
という疑念が軽く浮かぶ程度だった。
あるいはセミナーが終われば落ち着くか…と。

しかし、今回の事件で氏は転機を迎えていたことが周囲から漏らされた。

delete-all.hatenablog.com

氏は藤沢で初めて会ったときに「最近面白いことがしたいのでhagexとして積極的に表に出て行くことにしました」と言っていた。やりたいことをやって、会いたい人に会うと(その会いたい人第一号が僕だったらしい。光栄だ)。

delete-all.hatenablog.com

彼は「hagexとして表に出て面白いことをやりたい。取っ掛かりとして会いたいと思っていたブロガーに会うことにしました」と言っていた。それで最初に声を掛けたのが僕というわけだ。

lastline.hatenablog.com

個人的に、最近のHagex氏は、目線を隠しているとは言え、少々露出し過ぎてはないかなと危惧していた。やまもといちろう氏は やまもといちろう 公式ブログ - Hagexに王様はいなかった - Powered by LINE 、において、Hagex氏こと岡本顕一郎氏がリスクを取ったのだろうと書かれいる。岡本氏の活動を見るに、ネットのリスクを警鐘するために、徐々に露出を増やすつもりではあったのかもしれない。それが、今回のような事件になってしまい、とても残念である。

lineblog.me

彼も彼なりに考えて、今後のことも踏まえ彼は「ネットウォッチャーのHagexさん」ではなく「闇ウェブ界隈やホワイトハッカー集団の一員である岡本顕一郎さん」へとシフトしようとしていたのでしょう。「切込隊長から山本一郎になぜしたんですか?」と訊かれたときに、私はいつも通り「もういい年齢で、いつまでも切込隊長を名乗るのもしっくりこないので」と答え、それに「いやいや、それは建前でしょう?」と突っ込んできたのは岡本さんだけでした。

傍証により違和感への納得・確信ができた。
まさにリスクを取りにいっていたのだ。(ろうか。氏を思えば当然考慮していたと思うが、確定ではそういえばないなあ)
バカだなあと傍観していた私には理解も及ばない決断があってのバカと思われる行動だったのだろう。
図らずも公表された本名と所属から漏れ出る伝聞では本業もあり人柄もよく人望もあったそうで、
なおさら危険を冒してまで欲しかったものは私には想像も及ばないのだが。

だが、彼らが言うことが真ならば、氏の方針転換、露出増は一過性のものではなく、むしろ成功を重ねることでより増していく傾向のものだと思えてならない。

そう仮定すると、私からHagex氏への好感度は右肩下がりが強く懸念され、私自身は底値になるまで見ちゃう人なので、
多少違和感を覚えていた今というタイミングで氏の評価が凍結されたことは、残念だが喜ばしいことだと言うことができてしまう。人としてどうかは別で。
ついでに言えば死んだから評価があがるということも無いし故人を悪く言うなというのも、悪口を推奨なんてするわけもないですが、違和感を覚えないわけではない。

あと記録として

mubou.seesaa.net

「問題」や「責任」があったかどうかは思考放棄して保留するとして、射程範囲に入りやすくした「原因」はあったかなと思いました。
言葉遊びの範疇か。
雉も鳴かずば。記事が鳴く人はオフラインセミナーを開かずば。(まったく上手くない)

特別だったか

訃報というものは突然訪れるものである。
しかし誰がどのように亡くなったかによって受け取り手の想いの軽重は異なると思う。
今回はいろいろなことが重なって、ネット上の人の訃報としては過去最大級にいろいろな思いが巡ったのは確かだ。
まあ少なくない部分が低能先生の問題と一緒に書かれて複雑でよくわからないなというものだが。
脳内だけで考えたり将来振り返ったりするとそこんところがノイズで混乱するだろうから、ただ亡くなったことに関する思いはこれぐらいだという話。たぶん。

以後についてはもうブログ更新が望めず、またたまの暇つぶしの読み物に困ってしまうなあという次第です。
うまくまとまらない。変なこと書いてる。

西村悠 僕と彼女とギャルゲーな戦い 感想

mwbunko.com

妄想ジョナさん。の西村さんの作品です。

作りはですねえ。
実にお手本的な兼業作家の本業題材小説
というものです。
そういったジャンルを他に読んでいるわけではないのですが…そんな雰囲気を感じました。
たとえば現役医者が書いた医者が主人公の本とか、
銃やバイクやカメラにハマっているひとが作中でそういったものを書いているときのような香りがします。(特に開発環境の下りとか)

本作ならシナリオライターが書いたシナリオライターが主人公のお話ですね。
ADVゲームの制作現場をギャルゲー未経験な主人公を通して紹介していきます。
単巻ということもあって、紹介も展開もサクサクサクと、これもお手本のように。
主人公は最初サブライターとしてヘルプ参加します。
が、経験を積むかと思ったら急遽メインライターとなり、ゲーム一作を通していろいろ悩み人とつながり人生とも向き合い作品完成まで走り抜けます。

うーん、素晴らしい完結具合。
最初はトラブル込でSHIROBAKOっぽい雰囲気なのかな?と思ったけど、すぐに最短で展開する短距離走の話として扱いました。

最短すぎてちょっと同僚との絡みが薄いのですが、キャラをちゃんと立てているので逆にもったいない気がしました。
んーでもそのキャラのわかりやすさも走り抜けやすさに貢献しているとも感じるので痛し痒しですね。

もう一つきちんと抑えていて良かった点は主人公の長所ですね。
主人公はテキストを書くスピードが早い…らしいです。
ここはちょっと普通の人の分量が提示されていないので、漫然と早いことしかわからないのがややマイナスでしたが、主人公がすごいと思っていない長所があるのは現代風かな?
ただ、ギャルゲー未経験ということでなろうみたいなすごい文章を大量にかけるチート系ではなく、終始修正指示が山のようにくる形が終わりまで続きます。
そこは好き。
どんなに頑張っても初作品らしさが出ていて、やる気があってもすごい上達するわけでもなく。
でもその修正が必要なテキストが埋もれがちな職業の制作・進行の先輩との接点になるというのはひとつでいろいろ美味しいところでした。

終盤の主人公ののめり込み具合にはちょっと感情移入が難しいかもしれませんが、まあそこまでのお手本のような流れからちょっとひねった感もあるし、悪くはない…かな?

ということであっさり読める3つ星。
悪い意味ではなく「面白い。ではなく読める。が優位の作品」。
お話がちゃんとできていてゲーム制作の雰囲気も味わえる佳作。
いい意味で一度読めば満足できる作品。
久しぶりにライトノベル読んだーって気分になれました。

神坂一 スレイヤーズ 08 死霊都市の王 感想

竜王ガーヴに対して絶体絶命のリナたち。いかに~!?

からの冥王フィブリゾ登場の不意打ちバイバイ。しかも前回から端役ででていました。と。

ざ、雑~

ガウリイがさらわれて、サイラーグに向かうも邪魔する竜将軍。
人里に配慮しつつ、わざと殺さないように立ち回って…雑~

フィブリゾくんなんだか良く分からない理由で都市復元したりゲームっぽいことして、間抜けな動揺で倒されて…

ざ、…

ここまで読んでこの作品のイマイチ乗り切れない点が

  1. ラ・ティルト、ドラグスレイブが大味
  2. 魔族戦に緊張感が無い
  3. 魔族が人間レベル(の馬鹿(悲))

デス。
奇数巻はまあまあ緊張感があったのですが、それでもここ数巻の魔族が人間の土俵で戦い過ぎてて、しまいにはフィブリゾくんの振る舞いが耐えられませんでした。
強く振舞っているVSゼル・アメリア戦も、ラ・ティルトが効かない時点で手詰まりですし、その前にガーヴやラーシャートに有効打にならなかった時点で試合未満ですよね。お話としてイマイチ…
「足手まといにならないように付いていく」と宣言した以上は、何か見せ場が欲しかったところ。


どうしても一巻以降は練り上げた設定のしわ寄せがシナリオに来ている感じで、やや真面目な本編にお付き合いするのはちょっともう難しいかなー。

と思いながら読んでいたんですが、フィブリゾ倒した後のエピローグは読み味良く妙にさわやかで、魔剣探しという題材も面白そうだし。
一部が終わって魔族も落ち着くなら読み続けてもいいかな。とかなり天秤が傾きました。不思議。

でも、キリが良いし評価が上向くより下がる気配のほうが濃厚だったので、読むのはちょっとお休みします。

短編かアニメか。何かで興が乗ったらまた読み出すかも。
時代の違いのせいとは言いたくなくて、自分との相性な気がする作品でした。

宮部みゆき 幻色江戸ごよみ 感想

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すごい久しぶりの宮部みゆき
好きな作家だけど、かれこれまだ4冊目ぐらいで、読むのは十年ぶり?

江戸モノは本所深川ふしぎ草紙を読んだけれど、もう内容忘れたなあ。

江戸時代を舞台とした、12編の短編小説。
人情もの。でいいのかな?

ジャンルはミステリーだと思わせながら読み始めた「鬼子母火」。
”あ、そういうのアリな作品なんだ”と諒解するとともに、宮部みゆきワールドに再入門しました。

江戸時代を舞台にしながら、
登場人物の人生の一部を見ているだけなのに、
短編という短いページ数のなかで、
キャラクターたちをすとん、と受け入れられるのです。

心情のゆれ幅を味わう作品で、誰も彼もが『それまでの人生』があったんだと感じる人々が織り成す人の情念。ときには生死さえ越えた。

それが「鬼子母火」から「紅の玉」の流れでぐわぁーと押し寄せるんですよね。
ハッピーエンドだったりバッドエンドだったり、敵を倒したり誰かとお別れしたり。
普段カッチリと進行した物語を読みなれたうえで『たったこれだけの話』で心情の機微を味わえて面白いのは…面白い。再発見。

言い換えれば密度が高い、ですか。
「器量のぞみ」なんて、一度そこで終わっていいところから、さらにもう一歩進め落としたのは贅沢だと思いましたし。
世間を知り竹を割ったような主人公をああも迷わせ、ある意味すっきりとはしないような決断までの流れは好きです。

人が人をという点では「庄助の夜着」も。傍観者の読者をして『そこはそうしておけば!』と言えない物語で。
みんなが優し過ぎる結果の結末。庄助の本当はどっちだったんでしょうか。どちらだといいんでしょうか。

細かい部分では、対話しているけれど一人分のセリフしか描写されない落語形式?音声作品形式?
な「春花秋燈」「小袖の手」も語り口が好きなところ。

そして「紙吹雪」の笑顔で〆。と。

各話序盤の江戸っぽさが野暮ったいと思う人も居るかもしれないが、それを差っぴいても短編なのですぐにオイシイところにたどり着ける。
時代背景に疎い人でも楽しめる作品だと思います。

なかなかどうして未だに長編は手を出しにくい文体なんですが、短編はべらぼうに面白いですね。
読書入門には勧めにくいですが、普段別ジャンル読んでいる人ならちょっとした気分転換になるかも。なりました。