かのくらかの

かのくらかのが送るかのくらかの。と言われたい。娯楽感想日記。

ネタバレを含みます。

佐藤大輔 皇国の守護者 01 反逆の戦場 感想

漫画版読み返したらいきおい読み返したくなったので。
2度目です。

エロゲデブなぜ死んだー!!

読んで再度思い直すのは、コミカライズの出来がいいなあという点。
ユーリアを先に出したのは良かったし、新城のデザインが秀逸ですよね。
って漫画版の感想か。

えー、はい。
中尉の癖に国家単位の戦略観を持つ、まっすぐに歪な主人公のなりあがり物語、でしょうか?

似て非なるものが漫画で言うと軍靴のバルツァー

しっかし不思議なことに、このお話、負け戦の話なんですけど面白いんですよね。
本当、なんもかんも上手くいかない。
強いてあげれば夜戦で一大隊と三大隊+遅滞が交換できたことぐらいが成功?
でも大隊長以下死んじゃってるし…
偵察も莫迦のせいで首尾よくは行かず、天龍にうっかり出くわし遅延。
脅しのはずが子供を打つわ、卑劣を承知で取り付けた艦砲射撃は海の藻屑に消えゆ…
挽回の一手の輜重襲撃は手持ちでしたー。小苗の主力は降伏もできず…ってこれは次巻か。

まあまあ夜戦含め新城が大隊指揮官になるまでの必然的敗北が必要なのですが、
まーぁ上手くいかない!
ぶっちゃけ次巻以降も超スカッとする話でもない!
でも読んでいて苦でもなく楽しいのは、新城の性格とこの世界の設定でしょうかー?

戦記・仮想戦記は読まない人ですけれど。
ギリギリ、ライフリングの世界にトラと中国龍と翼竜と、テレパシーによる即時通信。
まだまだ隊列と要塞が強い時代にこんなファンタジーぶっこんだらもうワクワクすること請負。
導術による一方的索敵に、突っ込めば銃兵比1:20の剣牙虎。
上手く突っ込めば確実に被害より打撃が多くなるのに、敵が多すぎてどうしよーもないのが逆に開き直れる原因かな?

新城の性格もですねー。現代的と言いますか。
こう、難しいんですけれど、「読者を有能だと錯覚させることが上手い主人公」だと思います。
新城の考えにうんうん頷きながら読めばあなたも有能な指揮官!
でありながら、完璧には感情移入できない、でも理解できる強烈な粗野な人間味がある。
「兵」には誠実で「自分」には折り合いをつけつつ、「人」には苛烈?でいて至極小心でそれを自嘲してしまう。
うーん、わかりやすくわかりずらい作り。

本当に彼の魅力と、初心者でもちょうど良い感じの作りで、さらに導入用の漫画版まであるという万全な布陣。
この巻で言うと、新城のしがらみが(これでも)少なく、純粋に撤退戦が楽しめるのではなかろうか。
ヒロインは残念ながら猪口曹長となってしまうがそこはご容赦願いたい。
後を知る身としては豪華な前菜。されどここまででも良いかな?と思わせる北領撤退戦。
漫画版以上に濃密な新城の心情を味わいたければ、やはり小説版もいいなあと思わせる読後感でした!