蝿の王 ギブアップ 感想
七章(六章終わり)でギブアップ。
お疲れ様でした。
翻訳独特のぎっちり文章なので、ラノベ一冊分は読んだはず。
誰のための読書
ベルゼブブさんのためですよね。
足洗の学園長のフリガナでしたし。
他の名著よりは入りやすい題材かな、と。
でも無理でした。
緊張感のないサバイバル
サバイバルものはシチュエーション自体は好きなんです。
でもこのお話はそれがメインでないのかあっさりでした。
飛行機事故からの遭難でスタートするのですが、
- メンバー集めは初日にほら貝を吹いて集合完了
- 飲み水は容易に得られる
- とりあえず海で泳ぐ娯楽性
- 食料は果実が腐るほどある
- 豚狩猟が固執的偏狂扱いになるほど
- 火は眼鏡の太陽レンズであっさり入手
漂流物の造詣は超浅いのですが、こんなものなんでしょうか。
住居に関しては作中で苦言されますが、不和の一部程度で。
あくまで隔離環境が重要そう。
不和不和タイム
作劇は、とかく不和の描写に割かれます。
団結しない登場人物
カリスマとして描かれるラーフと、平時の楽団リーダーを引き継いで来て、豚狩りに奔走するジャックの対立。
(部分的な)理だけでは人々を導けないピギーー。
考えない幼少組。
比較的大人に見えるラーフですら辟易とする子供の統制に見ているほうもげっそりします。
無意味な集会
始まりの象徴のほら貝を吹き、(現実と同じように当然守られない)ほら貝を持つことで得られる発言権。
そこでは不毛な言い争いと守られない決定ごとにあふれ、集会をすることが目的の集会が行われる。
実はここは読んでるときはキャラクター性が見える部分でそんなに嫌いじゃなかったです。
というか本当に集会ばっかりでそれがベースというか、ルーチン程度に読んでました。
まあ割合多すぎで挫折したのはそうなんですが…。
現実的な衆愚描写にみえ、効果的に嫌悪させられているなと感心の域ですね。
ピギーくんかわいそう。とも全面的に言い切れないのが蝿の王のすごいところ。
無意味な豚狩り
ラーフの対のジャックは最初に見た豚に異様に執着します。
狩猟自体は肉の確保になりますし、他の何もしない子供たちよりは、比較的生産的なのですが…。
結果が得られない。いやようやっと得られたんですが、そのときにはいろいろ失っている。
主にジャック君の人間性が。
大体の子供たちが楽観的現代人の遭難を謳歌している間、彼は森で豚を追いかけ、どんどんどんどんゲンシカイキしていきます。
そもそも彼がなんでそんなに豚を最初期から追い求めているのかが謎で、不気味。
烽火というお約束
で、ジャック君が豚狩りには人手が要ると、火守女(女ではない)まで動因することで、烽火が消えたりします。
烽火は外界へのサインとして、救出の唯一の望みとして絶やさないことが最初に約束されました。
が、長い遭難生活によって、先述のジャック君たちや怠慢により消えます。
ジャック君のときは外洋に船が見えていたときだったのでラーフ君はムカ着火ファイアーでして。
最重要案件の烽火すら長い時間では風化して、気にしすぎという雰囲気まででるのが実におそろしい。
そんなこんなが
200ページ以上続きます。
ギスギスはまま良いのですが、集会・豚・篝火そして謎の獣の話題のみがループして延々と続き、もういいよって。
手を変え品を変え、もうちょっと不和以外のキャラクターのからみがあれば読み進められたのですが…。
6章終盤では物語が動き出したんですが、なんだかもうタイムアウトで、読めるけど楽しめない状態になってしまった。
テーマじゃなくてシチュエーションでアウト。
知識不足が敗因か
Wiki含めた知識では、この作品はそもそも十五少年漂流記や宝島などのジュブナイル冒険記ジャンルのゆり戻しというか、ジャンル後期のダーク化に類するのかなと思います。
だから元にある爽快感を廃してうまくいかないところを丁寧丁寧丁寧に描いていると思うんですけど、あいにくと十五少年漂流記も宝島も読んでいなくて、そこらへんのコンテキストを共有できていませんでした。
だから、不幸な出会いだったかもしれませんね。
総評
悲劇とわかっていながらも悲劇に耐えられなかった読者の問題。
ラノベ読みにはきつい一般小説特有の起伏の少なさ。
キャラクターそれぞれを表面的に読んだらダメな気がする記号。
子供と謎の獣の話を心理的なものと理解できずに輪郭をなぞる描写に耐えられない忍耐力のなさ。
総じて読み手が悪いギブアップで、読み手が悪い星2です。
仲間割れしない段階でのギブアップってダメにもほどがありますが、まあこういうこともあるよね。
漫画化とかされたら読んでもいいよ。