かのくらかの

かのくらかのが送るかのくらかの。と言われたい。娯楽感想日記。

ネタバレを含みます。

φの方石 ―白幽堂魔石奇譚― 感想

そうそうこれだよメディアワークス文庫に求めているのは。
電撃文庫ほど行き過ぎない感じね。

ということで、第21回電撃小説大賞 大賞、新田周右作のφの方石です。

dengekitaisho.jp

デビュー作? 信じないね

いやーうまかった。
現実の歴史に昔から方石というものが公に存在しており、過去の偉人たちの一部は現実の偉業たるものを方石で残しているという世界観。
よく練られているだろうに、過分に開陳しない自制さはすごい。
主人公が方石の専門知識無しということで学科として説明しているけど、くどくはなりすぎていなかった。
文章も非常に読みやすく、情景描写に振りすぎるということもなかった。
なのにもろもろの所作はしっかり押さえてキャラの魅力を引き出せていたよね。
キャラにしても過不足なく、使い切って、本筋に絡まないキャラすらも本編後のフォローとして置くというのははーっとなった。
逆に言えばちょうど良すぎて意表を突かれることはなかったね。
そして、方石からなにから、「模写」という一貫したテーマですべてを統括してみせたその技量は、これがデビュー作とは信じたくないこなれ感を覚え、最近の界隈のレベルの高さを再確認しました。

断言したい。作者は女性だと!

新田周右という男性なペンネームなんですが、キャラクター造詣は女性的な感じを受け、瑛介の初登場からずっと感じ続けていました。

主人公の白堂瑛介は、長身細身のイケメンで、性格は人を寄せつけず、そしてイジワル。
と思いきや、読者にはバレバレな思いやりの満載さや気にかけや皿を並べるシーンがあざとい!ずるい!おかわり!あざとい!
相棒ポジションには糸目の関西弁キャラのキツネキャラですね。猿ですけど。BLEACHにしてギン。
さらにナイスミドル枠として、がっしりして理的な独身学者先生を添えて八方よし!
女主人公は!両親がおらず!家事一辺ができ!ちょっと引っ込み思案だけど!努力家で!勉強も交友関係もがんばる!からかわれてプンプン!だけど彼のことを受け入れている!

ほんと、ターゲットはやや女性向けと解釈して読んでいたのですが、真相はいかに。

書ききった後調べたら画像あったよ!

ascii.jp

男性だよ!
24歳だよ!
超びっくり!!
関係ないけど同期?の仲谷鳰さんもよいです。

気になる点はなくもない

イラストの宵呼は幼すぎデコ出すぎ。
っと思ったら、そういえば彼らは15、17歳で、物語としては高校生相当なんですよね。
物語が落ち着いていて、制度もろもろが大学よりだったので、大学生として読んでいました。
高校生ならちょっと大人びすぎかなー。

時間関係で言えば、物語は出会って10日間ぐらいしか立っていないんですよね。後半お凛さんとのお話で判明。
まー人間関係も探偵業も怪盗業も、ちょっとせわしないかなって。
インターンスティが短期間限定ということが、出会いのきっかけでなし崩し的に居座るかと思われたのが、物語の末に来る形でしたね。

そういった関係?で、クライマックスへ至る推理パートも対決パートもぽんぽんと進み、迷わず謎が解け物理で殴って終わり。
そういえば対決オチは乱装天傀。ままよくある形ですが。

総評

よくまとまった納得の実力作。
魅力的な世界観を持つキャラクターの優しさの所作を楽しんだ小説でした。
受賞作の例に漏れず、続編が4作目まで出たようですが、彼らに引き込まれたのなら続きを読んでもよいかも。

蛇足

読み終わるまで、「φの方石」が編集作。「白幽堂魔石奇譚」が応募時のタイトルだと思っていました。
逆?でした。
応募ってもっと気取ってるもんだと思うじゃん!
こなれー